米国の利上げ再開を見込んで、米国の債券利回りが上昇しています。今回は足元の米債券市場の変化を想定し、今後の米株式市場をイメージしたいと思います。
図表1に掲載した、イールドスプレッドをご覧ください(緑のライン)。イールドスプレッドは、米10年債利回りから米2年債利回りを差し引いたものです。
10年債利回りは1.8%台前半まで急回復しました。ただ、政策金利の影響をより受けやすい2年債利回りは約2カ月ぶりに0.9%台に上昇し、より騰勢を強める展開となっています。その結果、10年債利回りとの差は1.0%(0.94%、5/20時点)を下回り、2007年12月以来の水準まで縮小。イールドスプレッドはフラット化が進展しています。
2年債利回りの緩やかな上昇基調は変わりそうにないが、フラット化に一時的に巻き戻し(逆の動き)が起きるとすればどうでしょう。それが過去のように景気拡大にともなうものであれば、10年債利回りの上昇余地が大きいことになります。
そうなると、株式市場はどうなるのか?
図表2をご覧ください。10年債利回りと、ハイテク関連やネット関連中心のナスダック総合指数(以下、「小型株」という表記)と大型株で構成されるS&P500指数(以下、「大型株」という表記)の相対指数を2008年以降で示したものです。
まず、10年債利回りの推移だけをみると、2012年から下値が切り上がっています。図表内では印や表記で示していませんが、2008年12月安値から2012年安値(7月)までは月次ベースで44カ月。2012年7月から44カ月が今年の2月になり、実際に日足では2/11に1.659%の安値を付けて戻り歩調が続いています。仮に、2%の水準や上値抵抗線を上に抜け出せば、中期的には3%程度が視野に入ってくる。6月~7月は正念場となりそうです。
小型株と大型株の相対指数は2008年以降で右肩上がりが続いています。米株式市場の上昇が続くなかでも、小型株が大型株よりも優位に展開してきたことがわかります。特に10年債利回りが急上昇する局面(オレンジの部分)では、相対指数は小型株優位に強く上昇するケースが多かった。もし、この先、FRBによる利上げを意識して金利の上昇基調が強まれば、米株式市場は昨年同様に小型株が面白くなってくるはず。ナスダック市場に上場するバイオテクノロジー株の動向なども要注目で、東京市場でも一服気味のバイオベンチャー株に見直し買いが期待できるかもしれません。ただ、どれもこれもではなく、なかでも選別はされるでしょうけど。
一方、そうは言っても、10年債利回りは趨勢的には低下基調が続いています。下値を切り上げる下値支持線を明確に下回れば、1.5%台が視野に入ることになるでしょう。そうなると小型株が劣勢になると思います。金利の低下が大型株の上昇の支えになる、といった見方もできなくもない。実際、昨年12月から下げに転じた(大型株の優勢に転じた)相対指数は、52週線を下回り、52週線のトレンドも下向きに変わりつつあるようにもみえます。
10年債利回りは「三角もち合い」を形成しており、どちらに放れていくかで株式市場における規模別優位の判断材料になるのではないでしょうか。
東野 幸利
株式会社DZHフィナンシャルリサーチ
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