ヘッジと云う言葉があります。私は30年ほど前に新卒新入社員で配属された部署が、ヘッジ・マネージメント・デスクと云う所でしたし、ずっと金融の仕事をしてきているので、「ヘッジ」はあまりにも馴染みの深い言葉で、実際この言葉が世間的にはどの程度知られている・使われている言葉なのか、見当が付きません。

何か悪いことが起きた時のダメージを回避すべく、そのダメージと同規模のプラスのリターンが出るような施策を予め打つこと、とでも云いましょうか。株式ポートフォリオの価格変動リスクをヘッジするために先物を売るとか、或いは何かを主張する時に予め云い訳を混ぜることにより、もし主張が外れた場合でも恥ずかしくないようにヘッジするとか、そんな風に使われます。

ヘッジは様々な経済活動においてリスクやダメージをコントロールするのに有効な手段です。株価が下がることのみならず、上がることもヘッジ出来ます。デフレ期でもインフレ期でも、資産価格をヘッジすることも出来ます。何か気持ちが傷ついた時に、その代償となるようなイベントを仕組んでおいて、或る程度気持ちの落ち込みをヘッジすることも可能です。

しかし気持ちのブレとか、マインドセット自体をヘッジすることは出来ません。謂わばヘッジとは、起きてしまったことの埋め合わせの手段であり、起きること自体の回避策ではないのです。ヘッジ出来ることはヘッジして、その上でヘッジが効かないこととどう折り合いを付けて、どう付き合っていくかが、生きていく上では大切ですね。