「商人」の語源は、中国最古の王朝「殷」の別称と言われます。この朝廷の王の放蕩ぶりが「酒池肉林」の語源ともなったことから、よくない語感があり、投資で儲ける人を「投機商人」などと呼びます。

これらの投機商人の投資先が、最近、株式から再び住宅に向かい始めました。中国上海株は、先週金曜日、1年8か月ぶりの安値をつけた一方、同じ日に発表された5月の中国全土の住宅価格上昇率は約1年ぶりの高水準と絶好調でした。

半面、中国の住宅価格の歪みはますます深刻化しています。中国と北朝鮮との国境の丹東市のマンションは、4月末に1週間で50%上昇しました。5月末に杭州で発売されたマンションでは、販売100戸に対し1万人が押し寄せ、けが人が出る騒ぎになりました。更には墓地の値段まで暴騰し、死ぬに死ねないなどとも報じられています。

にも拘らず、先週、人民銀行は、市場の利上げ予想に反し、金利を据え置きました。このように、景気への配慮、貿易への配慮で、金融緩和を続けざるを得ない状況の中、住宅価格を抑えるとしたら、投資規制を強化するしかないでしょう。

そうなれば、投機商人は、今度は住宅投資熱を「輸出」するだろうとの予想が出ています。中国の不動産投資情報・居外網は、中国人による不動産投資は今後10年で1兆5000億ドル(約165兆円)に上り、その半分が海外の不動産に流れると予測しています。

不透明感が囁かれる日本の住宅価格の下支えになればと思いますが、残念ながら、今のところ日本より東南アジアが人気のようです。日本の住宅市場は海外からみると独特です。不動産仲介業者はいまだに売り買い両方から手数料を取ることが可能ですし、賃借人が強いことから、投資利回りは上昇しにくくなっています。また、マンションの管理組合も閉鎖的で、最近では、中国人住人が増えた都心のタワマンで、組合の総会を中国語でやるよう住人から求められたという例も聞かれます。

オリンピック後の不動産市場への懸念を払拭するには、これまで連綿と続いていた古い慣行をそろそろ抜本的に見直す必要があるかもしれません。