先週EUで、フェイクニュースに関わる初の自主ルール案が策定されました。フェイスブック問題を受けての対策で、今後SNS等の運営会社は、オンライン上の偽情報を排除するよう促されます。

しかし結局運営会社ができるのは、あくまで、偽情報が出た後の対処です。情報拡散のスピードを考えると被害が防げない恐れがあります。

2003年12月、九州の佐賀銀行で大規模な取り付け騒ぎが発生しました。ある女性が知人たちに送った同行の倒産警告メールが拡散したためです。今なら、SNSを通じて、より広範囲に、かつ瞬時に噂が広がるでしょう。銀行の信用力が高いうちは大丈夫でしょうが、局面次第では、偽情報は、手軽な割に、高度なサイバー攻撃以上の被害を与えかねません。

こうした偽情報の被害は個人にも広がっています。米国の有力研究機関のピュー研究所の調査によれば、41%がネットでデマなどの被害を受けたことがあると回答しています(17年調査)。なかでも、18歳から29歳の若年層では3人に2人が被害を受けています。しかも発生率は増加傾向にあります。

ところが、偽情報の書き込みの発信者に刑罰が科されるケースは極めて稀です。佐賀銀行の事件でも、メールの送信者に悪意はなかったとして不起訴処分となっています。

これに対し、今月マレーシアで、世界で初めて、発信者に罰則を科す偽情報禁止法が成立しました。発信者への罰則は、書き込みの抑止力になります。言論統制との批判もあるようですが、企業や個人にとっての被害を考えると、運営業者だけでなく、発信者に対する対策も必須と思います。他国でも、偽情報への多面的かつ早急な取り組みが求められるでしょう。