フェイスブックのデータの不正利用問題が米国のIT業界に波紋を広げています。同社の時価総額は今年のピークから8兆円減少しました。

こうした不正問題は、かつてに比べて企業の株価に大きな影響を与えるようになっています。これは、「社会的責任(ESG)」投資ファンドの存在感が増しているためです。

ESG投資とは、「環境(Environmental)、社会(Social)、企業統治(Governance)」などに配慮する会社を評価し投資する、というものです。フェイスブックについては、ESG評価を行うMSCIが、 ESGの「G」、つまり企業統制への疑義などから評価を見直すとしています。 スウェーデン最大手の投資家・ノルディアもこの観点から、当面、投資を控えると報じられました。

日本でも、昨年GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が1兆円のESG投資を始めると発表し話題になりましたが、日本全体ではまだまだ欧米の20分の1以下に留まっています。世界のESG投資の残高はこの3年間で25%も増加し、今や世界で23兆ドル超に上ります。こうしたファンドが保有比率を0.1%ポイント減らしただけで、約2.4兆円の売り圧力になります。

さらに最近では、世界的に、若年層の環境への意識の高まりが話題になっています。米国の「ジェネレーションZ」と呼ばれる20歳以下の若年層では、「企業は、環境や社会に配慮するべきだ」と考える人の比率が94%と、中高齢層の83%に比べて高くなっています。

こうした若者のエコ意識の高まりもあり、ESG投資はますます活発化する可能性が高いと思われます。そうなれば、たとえ業績影響が軽微にみえる不正事件でも、意外と株価が下がることになります。こうした「非財務情報」や、ESG投資の動向には、これまで以上に注意を払う必要がありそうです。