今朝の日経新聞によると、トヨタが60歳定年で退職する社員を原則再雇用し、その雇用期間も段階的に65歳まで引き上げていくそうです。これは微妙な側面を含んでいますが、恐らく正しい判断だと思います。

少子高齢化が進み、その結果年金システムも破綻しつつある中で、定年退職時から年金支給開始時までの5年間の穴をどう埋めるかが大きなテーマとなっています。様々な不満や、色々なアイデアが語られていますが、問題の本質は「支える人口」と「支えられる人口」(あくまでも経済的な話ですが)のギャップの拡がりであることは明白です。ですから抜本的な解法は、働く人口を増やすことです。即ち、少子化に歯止めをかけるか、人口に占める労働人口率を上げることです。後者は、家庭に居る女性がもっと働くこと、或いは高齢者がもっと働くことによって達成可能ですが、重要なのはこれらの方がもっと働ける環境を用意することです。

構造改革が、国に任せていても進まず、結局民間が自ら動くことによって初めて意味のある規模で進んだように、女性と高齢者の労働環境問題も、国に任せていてはダメなのかも知れません。少子高齢化問題が起きる前に定着した「60歳定年」を維持し続ける合理的な理由はないでしょう。健康な高齢者が増えた現在、定年は上がるのが自然です。しかしその場合、企業にとって大幅なコスト増にならないような気をつけるべきです。或る程度のコスト増であれば、可処分所得の増加による需要の創出によって、経済全体でみると相殺可能でしょう。新しい試みに注目していきたいと思います。