先週の金曜日、日本は祝日でお休みでしたが、私はちょっとサンフランシスコで仕事をしました。短い滞在でしたが、考えさせられることもありました。サンフランシスコは想い出のある地です。大学を卒業して1年目、米投資銀行のNY本部でデリバティブなどの研修を受けていた私は、帰国する前に、謂わば箔を付けるために、いくつかの拠点を回って実務を見聞することになりました。ボストン、シカゴに1週間ずつ、そしてサンフランシスコ、ロンドンに2週間ずつ。都合1ヶ月半世界一周してからその足で東京に帰るという、今考えるととても贅沢な話しでした。
サンフランシスコでは、NYのデスクのボスが薦めてくれたプチ・ホテルに泊まりました。NYのマーケットに合わせて仕事をするため、NY時間の7時半、即ちサンフランシスコでは朝の4時半までにオフィスに行かなくてはならないので、毎朝3時半にモーニングコールをしてもらいました。2週間経ってチェックアウトする時に、ホテルの人がとても名残惜しんでくれたのを憶えています。朝の3時半に起きている当番の人にとって、数少ない口をきく相手だったのでしょう。以来17年間、サンフランシスコに行くと必ずそのホテルに泊まるのですが、オーナーが変わることはあっても、ホテル全体の雰囲気やきめ細かい対応に変わりはありません。一方でネット環境の改善や、内装やちょっとした館内のアレンジの仕方の変更など、時代に合わせた変化・改善が弛まず行われており、常に変わり続けることによって、いい伝統が継がれていることを知ります。
ところでサンフランシスコには何度も行ったことがあるのですが現代美術館は今回初めて寄りました。モダン・アートの中々いい作品が置いてあるのですが、「モダン・アート」はコンテンポラリーではないので変化しようがなく、既に過去の文化であることを強く感じました。アートは、或る時に或る変化と価値観を提言し、その内容が普遍的な価値を持つかどうかが勝負です。ビジネスは、常に変化し続けることによって、普遍的な価値を示し続けられるかどうかが勝負です。願わくは我々も、常に変化できる組織であり続けたいと、そう思った滞在でした。