先週の中国株ですが、上海総合指数と深セン総合指数、創業板指数、香港ハンセン指数は揃って続落という軟調な値動きになりました。上海総合指数ですが、週初の5月9日(月)から大幅続落でスタート。9日(月)の中国共産党機関紙である人民日報に匿名の当局者のコメントとして、短期の成長よりも、膨らんでいる債務の解消を優先すべきという記事が掲載されたことが投資家心理を悪化させました。これは、ここまでに行われた金融緩和策や景気刺激策を批判する内容で、今後の金融緩和策や景気刺激策への期待感を後退させるものとなりました。人民日報は5月10日(火)にも習近平国家主席が1月に行った演説の原稿を掲載。そこでも債務圧縮や過剰となった生産能力の削減に注力すべきだとの記載があります。
しかしながら、5月10日(火)の上海総合指数は小反発となっています。2日間にわたる大幅下落の反動ということもありますが、5月10日(火)に発表された中国の4月の生産者物価指数が3.4%減となり、3月実績の4.3%減や市場平均予想の3.7%減よりも小幅なマイナスに留まったことが、中国経済に対する悲観論を後退させました。ちなみに、5月8日(日)に発表されていた中国の4月の輸出は1.8%減とマイナスになり、3月実績の11.5%増や市場平均予想の0.0%(前年同月比変わらず)を下回っていたことから、中国経済に対する悲観論が増していたところでもあります。
その後は一進一退の小幅な値動きとなっています。11日(水)は2016年~2018年で総額4兆7,000億元規模のインフラ投資計画が発表されたことが好感されて小幅続伸となりますが、12日(木)は小反落となり、13日(金)も小幅続落となりました。12日(木)と13日(金)は特に大きなニュースは出ていませんが、前述の人民日報に掲載された記事が投資家心理を引き続き悪化させていることと、13日(金)の株式市場終了後に発表予定だった4月の中国経済全体のファイナンス規模や、14日(土)に発表予定だった中国の4月の小売売上高や鉱業生産の結果を見極めたいとして、様子見基調が拡がったことが、株価が軟調になった原因と思われます。
一方、香港ハンセン指数ですが、こちらは週の前半は先々週末に発表された、米国の雇用統計が悪かったことから、米国の利上げ懸念が後退したことや、米国株が堅調に推移したことがプラスとなり、比較的堅調に推移しました。しかし、週の後半は米国の株式市場が軟調だった影響を受けて下落し、2万ポイントを割り込んで週を終えています。個別株では、6月に行われる予定の英国のEU脱退に関する国民投票を懸念して、英国の業績比率が高いHSBC(00005)が軟調な動きとなっています。
ちなみに、13日(金)に発表された4月の中国経済全体のファイナンス規模は7,510億元で、3月実績の2兆3,360億元や市場平均予想であった1兆3,000億元を大幅に下回り、前述の人民日報の記事内容を裏付ける結果となりました。また、14日(土)に発表された中国の4月の小売売上高(前年同月比)は10.1%増<3月実績10.5%増、市場平均予想10.6%増>、4月の鉱工業生産(前年同月比)は6.0%増<3月実績6.8%増、市場平均予想6.5%増>となり、共に3月実績や市場平均予想を下回る結果となっています。これらの経済指標は、中国経済が景気刺激策によって回復基調にあるとの観測を後退させるもので、香港株にも悪影響を及ぼす可能性があるので注意が必要です。
コラム執筆:戸松信博
(グローバルリンクアドバイザーズ 代表取締役社長)