先週末、イースター休暇にもかかわらず、北朝鮮関連のニュースで、市場関係者は落ち着かない週末を過ごしたことでしょう。

こうした外交面での緊迫感に比較的左右されにくいのが、国内の個人消費です。しかし、米国では最近こちらも不穏な動きが出てきました。

「アメリカ経済は何かが間違っている」- JPモルガンのダイモンCEOが、4月4日付の株主への書簡で、堅調な経済の裏に潜む問題点の一つとして触れていたのが「学生ローン問題」です。その現状と見通しについて、今週の「東洋経済オンライン」に書かせていただきました(教育大国アメリカはローン地獄に悩んでいる)。

米国では、学生ローンが史上最高の145兆円まで積み上がっています。卒業後も長い期間負担が残るので、現在、米国の成人人口の約4人に1人、4,470万人が学生ローンを抱えて暮らしています。

日本と違って、米国では消費の増減と個人ローン残高に高い相関があります。個人消費の大きな部分がカードや自動車ローンなどの借り入れで支えられているためです。

このようなローン負担を背景に、米国では、親と同居する「パラサイト・シングル」が増加しています。昨年発表された米国の研究では、18歳から34歳までの若年層のうち、親元で暮らす人の割合が32.1%まで上昇しました。これは、調査が始まった1880年以来最高で、「結婚などパートナーとの同居」を初めて上回りました。

親との同居の増加はフランスやイタリアなど、若年失業率の上昇に悩む欧州の先進国にも見られる現象ですが、米国では若年失業率は改善しているので、やはりこうしたローン負担が要因の一つではないかと思われます。

サブプライム問題と違って、連邦政府による比較的ストレートな融資なので、何か大きなショックに繋がるというリスクは低いでしょう。しかし、米国の消費の原動力である借金に限界が来ているとすれば、消費への悪影響は十分注視すべきでしょう。更に、長期間親と同居することによる自立精神への影響なども懸念されます。

内憂外患のトランプ政権の舵取りが問われるところです。