大量破壊兵器は本当にあるのか否か。実際に証明するには膨大な人数と時間が必要でしょう。戦争をする、しないの分析にも、膨大なデータ処理や思考プロセスがあるでしょう。そしてもし戦争になったら、これも膨大な人数と資源を費やします。しかし兵器の存在を判断するのは最終的には少ない数の人間ですし、戦争をするかしないかを最終的に決めるのも、やはり極少数の人間です。まして相手との最終的な交渉をするのは通常「一人の人間」です。まぁ、主演男優(もしくは女優)とでも仮に呼びましょうか。交渉の相手は「個人」の場合もありますし、世論の場合もあります。アメリカとイラクを見ていると、ブッシュとフセインという必ずしもコミュニケーションが上手でない2人がその主演男優の筈なのですが、アメリカはパウエルの国内外の信認を考慮してか、主演男優の役割をブッシュと分担させているように見えます。一方イラクでは、アミンという国家監視局長が最近では主演男優として活躍しています。このアミンが、中々の役者です。先日アミンの記者会見をテレビで見たのですが、グッと聴衆を惹きつける力があります。
たかが個人、されど個人。このような世界的に極めて重要で、個人の力でどうこうなるものでないような局面でも、やはり個人の力は恐るべきものがあるとつくづく感じます。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。