フィリピンのアロヨ大統領の話で、一つとても印象的なことがあります。テロを含め、国内が大きく乱れる中で、女性の大統領として国を統率してきた訳ですから、並々ならぬ苦労があった、そして今もあることは想像に難くありません。彼女が言うには、そういう厳しい時に、リーダーシップはベストを目指しがちであるが、それは却って良くないと言うのです。ベストを目指しても環境が厳しければ達成できる確率は低い。しかも失敗すれば落胆もする。信頼も失う。ベターを目指せばどんな環境下でも達成できるだろうし、そうしていく中で自信も生まれ、やがて結果としてベストになっていくと。よくある処世術的な内容といえばそれまでですが、精神状態を安定して前向きに維持することは、大きなことを達成する為には極めて重要な要素です。ベストよりベターを。私もなるべくそう心掛けるようにしています。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
-
ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。