先週の中国株ですが、上海総合指数、深セン総合指数、創業板指数、香港ハンセン指数は揃って続落となりました。中国本土市場は9月3日(木)と9月4日(金)が抗日戦勝記念日の祝日で休場だったため、3日の取引となりました。ここのところの中国本土株の値動きを見ると、株価が下落しては銀行株などの時価総額の大きな銘柄が中国政府系ファンドの買い支えによって突然上昇し、株価指数の下落が食い止められているといった様子が続いています。特に先週は抗日戦争勝利70周年を記念する軍事パレードやG20財務相・中央銀行総裁会議の前であったこともあり、積極的な買い支えが行われたものと見られます。
なお、G20財務相・中央銀行総裁会議で中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁は、中国株のバブルが弾けたと発言すると同時に、9月5日の人民銀行のウェブサイトで、中国株の大幅下落は終わりに近づいているとの見解を示しています。また、中国のファンダメンタルには大きな変化はなく、長期の人民元相場下落の根拠もないとの見解を述べています。8月に行われた切り下げも、毎朝中国人民銀行が発表する基準値と市場実勢値(中国外貨取引センターのスポット価格)の乖離を解消するためのものであるとの見解です。
しかし、実際のところ、人民元はほぼ米ドルにペッグする形での為替推移となってきたため、2014年後半からのドル高に伴う人民高によって、ドル以外の通貨に対して20%前後の人民元高となってきたのも事実であり、これが輸出に悪影響を与えていることは間違いないでしょう。実際のところ、市場関係者もそのように見ているため、今後も人民元安は続くとの観点から人民元売りが続いており、現在は、資本流出を防ぐために、それを中国が為替介入によって買い支えているという構図です。ドルの利上げをキッカケに為替介入がなくなったり減少したりすれば、当然人民元安に動くことになります。人民元安が続けば新興国を中心に通貨の切り下げ競争となる懸念が出て、世界的に株価は一旦大きく下落するでしょうから、今後も米国の利上げのタイミングと中国の為替介入の動向には注意が必要でしょう。
一方、香港市場は9月3日(木)のみが祝日で、4日の取引となりました。香港株も中国経済失速懸念と米国の利上げ懸念の影響から軟調な状況が続き、香港ハンセン指数は週間で3.5%の下落となりました。ただ、ハンセンH株指数をみると2011年の欧州債務危機時の安値である8058ポイントや、2013年のシャドーバンキング問題が懸念された際の8641ポイントに接近してきており、引き続き高リスクであるものの長期では投資妙味の大きな水準であるとの見解も聞こえてきます。
今週の見通しについてですが、引き続き上海総合指数や中国の経済指標、米国の利上げへの動向が注目されることになります。なお、中国の経済指標ですが、先週は8月の中国公式製造業景況感指数(PMI)が49.7と発表されましたが、市場予想通りであったためにさほど材料視されませんでした(7月実績は50.0)。今週は9月8日(火)に中国の8月の輸出(前年比)の発表が予定されており、要注目です。
コラム執筆:戸松信博