金融庁が「証券市場の改革促進プログラム」を本日発表しました。金融庁のHPで全文見ることが出来ます。
http://www.fsa.go.jp/news/newsj/14/syouken/f-20020806-2.html
今月末まで、一般から広く意見を募集している(パブリックコメント)ので、折角ですから皆さんもドシドシ意見を送りましょう。私は既に先週金曜日に開かれた日証協の政策委員会で意見は金融庁には伝えていますが、パブリックコメントとしても伝えようと思います。私の意見はいっぱいありますが、主に次の3点です。
まず、上場企業側の問題をもっと強く意識すべきです。車が売れない時に、まずディーラーの店構えの議論をするでしょうか?まずはいいクルマを作ることを考えるでしょう。証券投資が普及しない、つまり株が売れない時にまず考えるべき事は、取引所や証券会社の問題よりも、株式の商品性の問題をもっと真剣に考えるべきです。上場企業関連ではディスクロージャーについてのみ少々書かれているだけで、プログラムはむしろ銀行と証券会社の共同店舗の実現など、その販売チャンネルの拡充などに力点が置かれていて、これは本末転倒とは言はずとも、最も重要な論点をなおざりにしていないでしょうか。またディスクロージャーに関しては、開示内容を増やすだけでは「仏つくって魂入れず」になりかねず、違反者に対してきちんとした罰則を与えるなどの運用面での実効性の担保が重要です。
次に、証券市場の改革を説くならば、持ち合いの問題を早急に抜本的に解決すべきです。株の持ち合いや法人所有が多い中ではコーポレート・ガバナンスが効く訳がありません。その意味で親子上場などの問題も真剣に議論すべきです。販売チャンネル論よりも、このような市場自体の抜本的な改善の方が遙かに重要です。
最後に、投資家が一つの店舗で銀行・証券双方の金融サービスを受けられるようにということで銀行の証券会社への場貸しを認めるならば、同時に証券会社に於いても、もっと便利に様々なサービスが受けられるような施策も考えるといいと思います。証券総合取引口座への給与振り込みの促進であるとか、株の配当金も今のように普通郵便でポストに送られてくるのではなく、少なくとも保管振替機構を利用している場合には証券総合取引口座に自動的に源泉して振り込まれるなど、銀行利用者にとって便利な証券取引だけでなく、証券会社利用者にとって便利な銀行取引も考えるといいと思います。
繰り返しますが金融庁は皆さんの意見を募集しています。メール、郵便、ファックスでの窓口が書かれています。ドシドシ、ドシドシ、意見を送りましょう。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。