全米第2位の長距離通信会社ワールドコムが連邦破産法11条の適用を申請しました。事実上の倒産です。ワールドコムは約4600億円の費用を将来に繰り延べて計上していたと言われています。仮に5年間に亘って繰り延べていたとすると、今年も1000億円の損、来年も1000億円の損、と5年続けるつもりだった訳ですが、本来は一括して4600億円の損を計上すべきだったということです。一方日本の大手銀行は、過去10年間で毎年平均8兆円弱の新たな不良債権処分損(貸倒引当金繰入額と貸出金償却額などを足したもの)を計上してきています。ワールドコムは事件発覚から数週間で株価がゼロまで行きましたが、邦銀の株価は新たな不良債権処分損が発生しても何のその、さ程は売られません。アメリカでは事件発覚後1、2ヶ月で既に政府が対策を打ち出し、その内容は不正会計を行なった経営者を厳しく罰するものでした。日本ではいつまで経っても出続ける不良債権問題に対して、政府は何年間も議論を続け、最後に公的資金(税金)を投入しました。勿論内容は大きく違いますが、こうやって並べてみると随分違うなぁと、私は思います。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。