単独介入と協調介入
この為替介入には、いくつかの分類方法があるが、その一つに、単独介入か協調介入かという分類がある。単独介入とは日本など一つの国が単独で行う介入である。これに対して協調介入とは、複数の国が協調して行う介入だ。協調介入は、日米のように2国間で行われる場合のほか、日米欧などの主要先進国によるG7の枠組みが活用されることもある。前者の場合は日米協調介入、後者ならG7協調介入となる。
2022年から円安が大幅に進み、それが長期にわたって続くようになったことから、その日本経済への悪影響を懸念し、円安阻止の為替介入が2022年、2024年、そして2026年と断続的に行われた。このうち、2022年、2024年、そして2026年4~5月に行われた介入は日本単独の介入だった。ただし、2026年7月には、2011年以来、円安阻止を目的とした円買い介入としては1998年以来、約28年ぶりとなる日米協調介入が実現した。
円高阻止より円安阻止が難しい?
為替介入のもう1つの分類方法として、円安などの通貨の阻止するものか、円高のような通貨高の阻止をするものかという分類がある。円高のような通貨高を阻止する場合、日本の通貨当局は円売りの一方で米ドルなど外貨を買う取引を行う。
この場合、売る円は自国通貨のため実質的に無制限といえるほど保有していることから介入資金の限界を基本的に懸念する必要はない。これに対して、円安阻止の場合は、米ドルなどの外貨を売り、自国通貨の円を買う介入だが、売るための外貨の保有には自ずと限界がある。
2011年に1米ドル=75円まで進み、100円を超える円高となる「超円高」が広がった局面で、日本政府は基本的には単独介入によって円高を阻止し、円安への反転に成功した。円高を止めるための為替介入なので、米ドル買い・円売りが基本になったわけだが、自国通貨である円を売る介入に制限はなかったことが、日本単独でも円高阻止ができた一因だったのではないか。
これに対して、2022年以降繰り返された円安阻止において、すでに述べたように約28年ぶりの日米協調介入が実現したのは、通貨高阻止に比べて通貨安阻止の場合、米ドルなど外国通貨を売り続けることに、保有額などの制約が影響したのだろう。
円高阻止のための自国通貨、円を売る介入と異なり、円安阻止の米ドルなど外貨を売る介入は、介入資金が枯渇し、継続が困難になることもあり得る。このため、米ドルを自国通貨とする米国が協調し、円安阻止の米ドル売り介入をすることで、円安阻止の介入体制を強化したということだろう。
為替介入の禁止行為、「近隣窮乏化策」
為替介入は、ファンダメンタルズからかい離した「行き過ぎた相場」形成の阻止・是正を目的に行われることが原則だ。その一方で、特定の水準への誘導を目的としたと見られる為替介入は、国際ルール上の禁止行為になっている。
なかでも、通貨安に誘導する政策は「近隣窮乏化策」と呼ばれる。これは、世界的な景気後退局面において、自国通貨安に誘導し近隣諸国に対して輸出競争力を高めることで、いち早く景気回復を目指すことを指している。
これまで見てきたように、介入資金という観点などから、円安のような自国通貨安阻止より、円高のような自国通貨高阻止のほうに余裕があるのは事実だろう。だからこそ、過度な円売りなどの自国通貨売り介入により、円安など自国通貨安への誘導を目的に為替介入を利用することへの国際的な監視は厳しい。
米国の通貨政策を担当する財務省は、年2回、為替報告書を議会に提出するが、その中では自国に有利な為替操作を行っている疑いのある「為替操作国」の認定が最大の焦点に位置づけられている。
