7月になると、私の登山シーズンが始まります。「百名山制覇の旅」もいよいよ残すはあと16座。今年も山へ出かける計画を立てています。
その話をすると、必ずと言ってよいほど「クマに注意して!」と言われます。時には、「登山はやめた方がいい」とも。もちろん、その気持ちはよくわかります。私もクマには遭遇したくありません。しかし私としては、「クマはいる前提で備える」という道を選びたいと考えます。交通事故があるからといって車に乗ることをやめるのではなく、安全運転を心掛けるのと似ているかもしれません。出没情報を確認し、クマ鈴やホーンなど必要な装備を準備します。
登山を続けていて実感するのは、自然は人間の思い通りにはならないということです。天候も火山活動も、野生動物の行動もコントロールすることはできません。コントロールできるのは、自分の知識や装備、そして判断だけです。情報を集め、準備をし、状況によっては引き返す。これまで何度も引き返し、計画を中止してきました。無理をして山頂を目指すことはありません。避けられるリスクは避け、残るリスクと向き合う。それが登山の基本だと思っています。
このことは、ビジネスや投資にも通じるように思います。
マーケットにも絶対はありません。社会情勢を思いどおりに変えることもできません。新しい事業にも失敗はあります。それでも私たちは、リスクを分析し、対策を講じ、残るリスクを受け入れながら前へ進みます。「リスクがあるからやらない」という判断だけでは、新しい可能性を狭めてしまいます。
「リスクゼロ」という言葉には安心感があります。しかし現実には、ゼロリスクの世界はありません。大切なのは、リスクをなくすことではなく、正しく理解し、備え、それでも一歩を踏み出すことではないでしょうか。
山も、仕事も、投資も。不確実性をなくすことはできません。だからこそ、自分がコントロールできることに最善を尽くし、無用なリスクは避け、それでも挑戦を続ける。その姿勢は、山でも仕事でも変わらないように思います。
- 清明 祐子
- マネックスグループ 代表執行役社長CEO/マネックス証券株式会社 取締役社長執行役員
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2001年4月株式会社三和銀行(現 株式会社三菱UFJ銀行)入行、2006年12月に株式会社MKSパートナーズに転じ、2009年2月にマネックス・ハンブレクト株式会社(2017年マネックス証券と統合)入社。2011年6月マネックス・ハンブレクト株式会社代表取締役社長を経て、2013年3月 マネックスグループ執行役員、2016年6月グループ執行役、2019年4月マネックス証券株式会社代表取締役社長に就任。2020年1月グループ代表執行役COO、2021年1月グループ代表執行役COO兼CFOに就任。2021年6月グループ取締役就任、2022年4月グループ取締役兼代表執行役 Co-CEO兼CFO就任、2023年6月より取締役兼代表執行役社長CEO(現任)。2024年1月マネックス証券取締役社長執行役員。
