モトリーフール米国本社 – 2026年6月16日 投稿記事より
株式市場での取引開始からわずか数日間で、スペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ(スペースX)[SPCX]は市場の期待に十分応えていると言えるでしょう。
2026年6月12日(金)に上場し、約860億ドルを調達した同社の株価は、すでに32%近く上昇しています。6月16日米東部時間午後2時23分時点で、株価は1株あたり約213ドル、時価総額は2兆8200億ドルに達しました。
これにより、スペースXの時価総額はアマゾン・ドットコム[AMZN]を上回り、マイクロソフト[MSFT]に迫る勢いとなりました。同社は上記時点で、時価総額で世界第5位の企業となりました。
上場してからわずか数日で世界最大級の企業の一つになるというのは、非常に驚くべきことです。しかし、投資家にとっては未知の領域でもあります。ここでは、このバリュエーションをどのように考えるべきかを見ていきましょう。
スペースXの3つの事業セグメント
スペースXには、「宇宙」、「コネクティビティ(通信)」、「人工知能(AI)」という3つの事業セグメントがあります。
スペースXの成長ストーリー全体を支える基盤である宇宙事業
まず宇宙事業部門は、商業顧客向けにロケット打ち上げを行い、宇宙飛行士を宇宙へ輸送しています。同社は「ファルコン9(Falcon 9)」のような再利用可能なロケットの開発に成功しており、これによって打ち上げコストを大幅に引き下げています。
興味深いことに、宇宙事業部門の獲得可能な最大市場規模(TAM)は3700億ドルと、3事業の中では最も小さいものの、この再利用可能なロケット技術こそが、スペースXの成長ストーリー全体を支える基盤となっています。
有力な収益事業であるコネクティビティ(通信)事業
次の事業部門は、「Starlink」としても知られるコネクティビティ事業です。Starlinkは現在、10,400基を超える衛星を用いた低軌道衛星インターネットサービスを提供しています。最終的な目標は、合計約42,000基の衛星を運用することです。
利用者は1030万人に達しており、Starlinkは、すでに有力な収益事業となっています。この部門は2025年に114億ドル近い売上高と約44億ドルの営業利益を計上しました。スペースXは、StarlinkのTAMを1兆6000億ドルと見積もっています。
宇宙空間の軌道上データセンターなどを担うAI事業
最後の事業部門はAIです。スペースXは2026年初め、イーロン・マスク氏が設立した別会社である「xAI」(未公開)を買収したことで、この事業部門を新たに追加しました。
AI事業部門には、ソーシャルメディア・プラットフォーム「X」、インテリジェンスプラットフォーム「Grok」、同社のデータセンター、そしてテスラ[TSLA]およびインテル[INTC]との提携によって建設予定のテラファブ(Terafab)施設(大規模AI製造施設)が含まれます。
また、AI事業部門は宇宙空間に軌道上データセンターを建設し、企業向けアプリケーションを提供する計画も進めています。スペースXは、このAI事業のTAMを26兆5000億ドルと見積もっています。
AI事業が支えるスペースXの巨額バリュエーション
TAMを見ると、AI事業部門が同社の巨額な企業価値を牽引していることは明らかです。同社が現在の企業価値を維持し、さらに成長させるためには、軌道上データセンターのような大規模な構想を実現する必要があります。
報道によると、ゴールドマン・サックス[GS]は、投資家向け説明会において、スペースXのAI事業部門の売上高が2030年までに100倍に成長する可能性があるとの見方を示したとされています。
投資家は、AI事業部門がアンソロピックおよびアルファベット[GOOGL]と総額22億ドルの月間売上高に相当する2件の大型AIコンピューティング契約を締結したことで、すでにその実力の一端を目の当たりにしています。
モーニングスターのアナリストチームは、AI事業部門に対して1株当たり108ドル近い「ムーンショット(大成功を前提とした)」的な評価額を算定しています。この資産は、同部門が「軌道上データセンターを急速に拡大し、2040年までにモーニングスターが予測するAIコンピューティング能力の20%を獲得する」という前提に基づいています。
しかし、モーニングスターはこのシナリオが実現する確率をわずか7%と見積もっています。同社はスペースXの評価に関して、ウォール街で最も弱気なアナリストチームの1つでもあるのかもしれません。
「マクロハード」が描く次世代AI構想と投資家の期待
さらに注目すべき点は、同社のTAM総額のうち、企業向けアプリケーション事業が22兆7000億ドルを占めていることです。
企業向けアプリケーションの概念はまだ曖昧ですが、スペースXは目論見書の中で、テスラと共同で「マクロハード(Macrohard)」と呼ばれるエージェント型AIプラットフォームを開発していると述べています。
開発が成功すれば、マクロハードは「高度な自律型エージェントを用いて、コーディングや製品開発から経営管理、さらには企業全体の業務プロセスに至るまで、デジタルワークフローを完全に再現し、人間によるコンピューター操作を補完できる能力」を持つことになります。
重要なポイントは、スペースXの企業価値がAI事業部門の将来性に依存しているということです。投資家は、同社が大規模な軌道上データセンターを構築し、それによってGrokやマクロハードを稼働させ、人間とほぼ同じように働くAIエージェントを開発・運用することに期待を寄せています。
一方で、こうした構想の実現がまだ不確実な段階でありながらも、市場がそれらの実現をかなり織り込んだ評価を与えていることに疑問を感じる投資家も少なくないでしょう。
それでも市場は、マスク氏とスペースXこそが、こうした野心的な目標に最も近い存在だと考えており、その結果として得られる可能性のある莫大なリターンがリスクに見合うと判断しているのかもしれません。
また、テスラも長年にわたって割高な株価倍率で取引されてきました。そのため、投資家はスペースXについても同様の評価を受けると考えた可能性があります。
免責事項と開示事項 記事は一般的な情報提供のみを目的としたものであり、投資家に対する投資アドバイスではありません。元記事の筆者Bram Berkowitz は、記載されているどの銘柄の株式も保有していません。モトリーフール米国本社は、アマゾン・ドットコム、ゴールドマン・サックス・グループ、インテル、マイクロソフト、ならびにテスラの株式を保有し、推奨しています。モトリーフールは情報開示方針を定めています。
