ネット上の所謂「風説の流布」が問題となることがしばしばあります。何らかの形で規制しようという意見もありますが、私はその考えに基本的に反対です。どんな勝手なことでも簡単に書けるし、その内容の正当性の証明が為せれず、その情報を信じてしまうこともあるからというのが規制派の論点です。しかしこの問題は検閲とか言論の自由の問題として慎重に論ぜられるべきだと思います。マス・メディア、特に全国紙やテレビの地上波が報じるニュースにしても必ずしもその情報が正しいとは限りませんし、その内容の責任の所在も不明な場合が多いと思われます。逆に、マスなメディアが報じるとそれは「正しい」と誰もが推定してしまうという厄介さもありますし、ネット上であれば反対意見も自由ですがマス・メディア相手だと不可能です。また内容が仮に間違っていてもあとから訂正されることは稀です。ネット上の風説の流布を規制することは、「検閲」を容認する結果となり兼ねませんし、マス・メディアの影響力の大きさと彼らに与えられている権利との対比において極めて大きな問題があると私は思います。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。