投機筋による円売りポジションの損失回避に伴う円買い転換を意識

日本の通貨当局は、2022年に3回、2024年に4回の米ドル売り・円買いの為替市場介入を行った。介入が行われた日の米ドル/円は、いずれも最大4~5円と大きく米ドル安・円高に動いた。これは短期売買を行う投機筋が、円売りポジションの損失回避のために円買い戻しに転換することを狙った、当局による意図的な円高誘導だったのではないか。

代表的な投機筋であるヘッジファンドの損益分岐点の目安は、120日MA(移動平均線)である可能性がある。米ドル/円の120日MAは、足下で157円程度まで上昇してきた(図表1参照)。その意味では、4月30日にも米ドル売り介入を行い、投機筋が円売りポジションの損失回避のために円買い戻しに転じることを狙って、5円程度の円高誘導に動いた可能性は考えられるだろう。

【図表1】米ドル/円と120日MA(2022年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

なお、2022、2024年とも、米ドル売り介入が行われ、米ドル/円が120日MAを割れる頃から投機筋の円売りポジションは急縮小に向かい、その動きとほぼ並行するように一段の米ドル安・円高が起こった(図表2参照)。

【図表2】米ドル/円とCFTC統計の投機筋の円ポジション(2022年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

日本単独の円安阻止は「失敗」のリスク=早々に日米協調もある?

ただ、2022・2024年の介入局面に比べて、足下の160円程度は5年MAかい離率で見ると、米ドル高・円安の「行き過ぎ」懸念はそれほど強くはない(図表3参照)。2022、2024年は、米ドル高・円安の「行き過ぎ」懸念が強かったからこそ、介入を行うことで「行き過ぎ」が是正されるきっかけになり、米ドル安・円高への反転に成功したのだろう。その観点からすると、今回160円程度での円安阻止介入は「失敗」するリスクもある。

【図表3】米ドル/円の5年MAかい離率(1990年~)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

そうした自覚は当局内にもあったからこそ、1月23日に行われた介入の前段階と理解されている「レートチェック」は日米協調になったのではないか。そう考えると、この先、円安が再燃した場合、片山財務相が繰り返している「断固たる措置」として介入に踏み切る場合、「レートチェック」と同様、早々に日米協調介入になる可能性も考えられる。

1998年の日米協調介入後は2営業日で最大13円程度の円高に

前回の日米協調米ドル売り・円買い介入は、1998年6月に行われた。財務省資料によると、この日の介入額は2312億円と、2024年の介入額が2~5兆円にも達したことに比べて、きわめて少額に過ぎなかった。しかしそれでも2営業日で146円→133円と最大で13円程度もの大幅な米ドル安・円高が起こった(図表4参照)。

【図表4】米ドル/円の推移(1995~1999年)
出所:LSEG社データよりマネックス証券が作成

この1998年の協調介入に比べると、今回の場合はすでに「レートチェック」が日米協調になったこともあり、実際に協調米ドル売り介入が実現してもサプライズ感は少ないかもしれない。ただすでに見てきたように、投機筋の円買い戻しの影響も重なることで、やはり10円前後もの大幅な米ドル安・円高が起こるきっかけになる可能性はあるのではないか。