私は音楽は何でも聞くのですが、つまりクラシックからロック、演歌から歌謡曲まで、とにかく真の雑食なのですが、中でも一時期かなり深く聞き込んだのが50年代のジャズです。いわゆるビ・バップというあたりです。大学生の頃に一番漁っていましたが、とにかくお金があればお酒を飲むかジャズのレコードを買うかといった時期がありました。安く多く聴こうとすると中古レコード屋とか、大学の生協での試聴盤も含めたどこか怪しげな処分品にも手を出します。実際レーベルが白い非売品も何故か随分持っています。そういう買い方をすると、なくなる前に安く買わなければという気持ちが迫り出して来て、耳にしたことのない作品や、聞いたこともないプレーヤーのものも買いたくなります。そういう時に一つ頼りにしていたのがルディー・ヴァン・ゲルダーという録音技師です。プレステージとかブルーノート、或いはマイナーなレーベルなど、複数のレーベルで多数録音しているのですが、彼の録音したものはほぼ間違いなく秀作でした。演奏や指揮する訳でもなく、作曲・編曲する訳でもなく、ただ単に受け身で録音するだけの筈なのですが、どれもどこか共通する味と、高い水準が守られていました。仕事を選んでいたのか、演奏者が彼を指名したのか。いわば触媒でしかあり得ない録音技師の参加が、作品をピリリとさせていました。私の考える理想の金融サービスとは、彼のような触媒のプロの仕事と基本的に同様な気がします。