一気に上昇に弾みがついたナスダック

16日の米株式市場でナスダック総合株価指数が12営業日連続で上昇した。ナスダックが12連騰するのは2009年7月以来、約16年9ヶ月ぶりだ。今週初めの株式相場展望(4月13日付け『日経平均の今週の予想レンジは5万4000円-5万8000円』で書いた通り、一目均衡表の雲を上抜けると一気に上昇に弾みがついた。

【ナスダック総合株価指数_一目均衡表】
出所:マネックス証券サイト

ハイテク株相場の主役は半導体株だ。フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)は連日の高値追いで最高値更新が続いている。

【フィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)の推移】
出所:Bloomberg

しかし - ここが重要な点であるが - 半導体株の未曽有の強気相場の主役がエヌビディアではない。チャートからも見てとれる通り、エヌビディアの株価推移はほぼ横ばい。2025年10月につけた高値に届いていない。

【エヌビディア株価推移】
出所:マネックス証券サイト

AI相場の牽引役は交代か

イラン戦争で急落した直近のボトムである3月末からの上昇率ランキングを見ると、エヌビディアはSOX指数のなかで下位10位である。

SOX指数構成銘柄パフォーマンスランキング(月初来)
 
 

 

このランキングが示唆することは、単純な「AI半導体全面高」ではなく、相場の主役が入れ替わっている点である。上位に位置しているのは、エヌビディア[NVDA]や台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング[TSM]のような“本丸”ではなく、クレド・テクノロジー・グループ・ホールディング[CRDO]、アステラ・ラボ[ALAB]、ラムバス[RMBS]、コヒレント[COHR]、アドバンスト・マイクロ・デバイシズ[AMD]、マーベル・テクノロジー[MRVL]、マイクロン・テクノロジー[MU]、オン・セミコンダクター・コーポレーション[ON]、ブロードコム[AVGO]といった、より周辺領域や次の受益層に属する銘柄群である。一方、下位にはエヌビディア、台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング、ASMLホールディング[ASML]、アーム・ホールディングス[ARM]といった、日本でもおなじみの顔ぶれが並ぶ。

AI相場の第一主役に対する過度な集中から、第二主役・第三主役へと物色が広がっている。

1週間前にこのランキングをチェックしたときはインテルがトップだった。これまでのインテル[INTC]やマイクロン・テクノロジーが強い局面から、今回のランキングを見る限り相場は一段と進んだ局面を示している。インテルやマイクロン・テクノロジーの上昇は「出遅れ修正」や「半導体サイクル回復」として解釈できた。しかしこのランキングでは、クレド・テクノロジー・グループ・ホールディング、アステラ・ラボ、ラムバス、コヒレントといった銘柄が上位に浮上している。これは投資家の関心が「GPUそのもの」から、「高速通信」「接続」「光」「メモリ周辺」「データセンター内のボトルネック解消」へとシフトしていることを意味する。言い換えれば、AI相場は“計算”中心の段階から、“システム全体”を評価する段階へと移行している。

クレド・テクノロジー・グループ・ホールディングやアステラ・ラボの上昇は、AIサーバーにおいてチップ単体の性能以上に、チップ間接続の重要性が増していることを反映していると考えられる。GPUの増加はネットワーク、インターコネクト、PCIe/CXL、さらには光接続の負荷を高め、それらが新たなボトルネックとなる。マーベル・テクノロジーやブロードコムの強さも同一の文脈で理解できる。また、コヒレントの上昇はデータセンターの高速化・光通信需要の拡大を示唆しており、ラムバスはメモリおよびインターフェース領域における知的財産を通じて、AIインフラの基盤部分に位置している。すなわち、上位銘柄は一見ばらばらでありながら、実際には「AIインフラの裾野拡大」という一つのテーマで強く結びついている。

これに対し、下位に位置する銘柄の共通点は何か。エヌビディア、台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング、ASMLホールディング、アーム・ホールディングスはいずれも、これまで「AIの王道」として最初に評価され、株価上昇を主導してきた銘柄群である。したがって、現状はこれらの企業のファンダメンタルズ悪化というよりも、期待の中心が周辺領域へと拡散した結果と捉えるべきであろう。実際に今週発表されたASMLホールディングや台湾セミコンダクター・マニュファクチャリングの決算は相変わらず非常に好業績を示すものだった。エヌビディアが下位に位置しているとはいえ、上昇率自体は依然としてプラスであり、崩壊ではなく相対的な劣後に過ぎない。この点からも、本局面は「主役交代」というより、「主役の一本足打法から、脇役を含めた厚みのある相場への移行」と評価するのが妥当だろう。

強気に解釈すれば、AIテーマが一部銘柄の物語から、より広範な産業需要へと深化していることを意味し、相場の裾野拡大は健全な現象である。まずGPUや先端製造が上昇し、その後メモリ、通信、検査、光、電源、アナログへと波及している。このランキングはまさにこの波及過程を示している。

周辺銘柄が一斉に上昇する局面が意味するところ

しかし、一般論として、主役銘柄が上昇する初期局面に比べ、周辺銘柄が一斉に上昇する局面は相場の後半に位置することが多い。今回のように、エヌビディアや台湾セミコンダクター・マニュファクチャリングといった王道銘柄が相対的に出遅れる一方で、周辺領域が上昇する構図は、資金の拡散とともに相場の熱が横方向へ広がっていることを示唆する。これはしばしば強気相場の終盤に観測されるパターンである。

日本は相変わらず、キオクシアホールディングス(285A)と古河電気工業(5801)の相場が続いているが、これもアドバンテスト(6857)など半導体製造装置の相場から、メモリーとストレージ(データセンター)への広がりを示すという意味では米国の半導体株相場と似てはいる。しかし、いかんせん、日本では物色対象が少ないためこれ以上、広がりようがないのではないか。

この半導体株の強気相場はそう簡単に終わるような気がしないのだが、上述のように本家の米国では強気相場の終盤に観測されるパターンになってきていることには注意が必要である。