中東情勢が緊迫する中、米国によるイラン攻撃は土壇場で回避され、市場にはひとまず安堵感が広がりました。しかし、本質的な対立が解消したわけではなく、問題の解決にはなお距離があると言えます。エネルギー価格が地政学に左右される構造は、今後も変わらないでしょう。
そうした中、先日メキシコを訪れる機会がありました。現金決済が85%を占め、銀行への信頼も限定的。インフォーマル経済の存在感も大きく、制度や経済の前提が日本とは大きく異なります。なかでも印象的だったのは、産油国でありながらガソリン価格が日本と同水準だったことです。
理由は明快です。メキシコは原油を産出しながらも、精製能力の不足や国営企業中心の体制のもとで、ガソリンの多くを米国から輸入しています。つまり、「資源を持っているか」ではなく、「付加価値を国内で担えるか」が価格を左右しているのです。一方の日本も、精製や流通では優位にあるものの、原油を海外に依存しており、価格の安定を外部に委ねている構造にあります。
資源を持たない以上、外部依存から完全に逃れることはできません。しかし、その依存の度合いは選ぶことができます。その意味で、国内で一定の供給を担える原発の活用は、有力な選択肢の一つだと考えます。実際、国内の議論も「是非」ではなく「どこまで使うか」という現実論に移ってきています。
もっとも、原発は新たなリスクも伴います。重要インフラへのサイバー攻撃が現実の脅威となる中で、物理面だけでなくデジタル面を含めた安全性が前提となります。
結局のところ、日本が直面しているのは「正解のある問題」ではありません。外部依存による不安定さか、国内で管理する複雑なリスクか。その選択を曖昧にしたままでは、構造的な不利は変わらないでしょう。
メキシコで感じたのは、「持っているかどうか」ではなく「どう使うか」で国の強さは決まるという現実でした。日本もまた、どのリスクを引き受けるのかを、自ら選ばざるを得ない段階に来ているのでしょうね。
