S&P500は米国の主要産業を代表する500社で構成される株価指数です。構成銘柄に採用されるには米国企業であることが前提で、それは米国内での売上高や固定資産、本社所在地などで判断されます。今回は2026年2-3月に構成銘柄になった5銘柄をご紹介します。

コヒレント[COHR]、一貫生産が強みの光・電子機器メーカー

高度な垂直統合型生産、AI向けトランシーバー需要を取り込む

コヒレント[COHR]は1971年に創業した光・電子デバイスメーカーです。通信、産業、計測機器、電子機器といった幅広い分野に製品とソリューションを提供しています。

最大の強みは、化合物半導体、先端材料、レーザー技術を活用し、材料からデバイス、モジュール、システムまでを一貫して手掛ける高度な垂直統合型の生産体制です。ヒ化ガリウム(GaAs)やリン化インジウム(InP)などの化合物半導体や炭化ケイ素(SiC)基板、各種光学材料を自社で設計・製造し、半導体レーザーのVCSEL(垂直共振器面発光レーザー)や光トランシーバー(光送受信モジュール)などに展開することで、高性能製品を提供しています。

特にトランシーバーは人工知能(AI)開発を支えるデータセンターには不可欠で、データセンター投資の活発化を受けて需要が急拡大しています。また、VCSELは、低消費電力での直接変調が可能という特性を生かし、光通信モジュール用の光源として利用されています。

エヌビディアが20億ドルを出資、データセンター向けに事業再編

AIインフラとも言えるデータセンターの稼働の鍵を握るコヒレントに着目したのが、潤沢な資金を持つエヌビディア[NVDA]です。2026年3月にはコヒレントに加え、次に紹介する光学製品メーカーのルメンタム・ホールディングス[LITE]との提携を発表。エヌビディアは両社にそれぞれ20億ドル出資すると明らかにしました。

エヌビディアはデータセンター事業者などに資金を提供し、自社のAI半導体チップの販路を確保しています。今回の出資を通じ、大規模なデータセンターを効率的に運営するのに不可欠な光学製品を優先的に調達する方針です。

コヒレントもデータセンター需要への対応を最優先する方向にかじを切っているようです。多様な製品をさまざまな業界に提供してきただけに2025年6月期までは事業の分類を「ネットワーキング」「素材」「レーザー」に分類してきました。ただ、2026年6月期(2025年7月1日スタート)から「データセンター・通信」「産業」に分類を再編しています。

データセンター・通信部門が牽引し、大幅な増収増益を達成

2025年10-12月期決算は売上高が前年同期比17%増の16億8600万ドル、純利益が104%増の1億4500万ドルと成長していますが、データセンター・通信部門の売上高が34%増の12億800万ドル、部門利益が44%増の3億600万ドルとなり、全体を押し上げています。

【図表1】コヒレント[COHR]:業績推移(単位:百万ドル)
出所:LSEGよりDZHフィナンシャルリサーチ作成
※期末は6月
【図表2】コヒレント[COHR]:週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年4月3日時点)

ルメンタム・ホールディングス[LITE]、光通信関連製品が中核

データセンター向け光学製品が中核、エヌビディアと業務提携

ルメンタム・ホールディングス[LITE]は光学製品を提供するグローバル企業です。高速光トランシーバーや光接続ソリューションなどデータセンター向けの光通信関連製品を中核に位置づけています。

前述のコヒレントとの共通点は多く、データセンター向けの光学製品の需要増でともに業績が急成長しています。エヌビディアが20億ドルを出資し、業務提携に踏み出した点も共通しています。

AI普及による高速・大容量通信の需要が急増、光接続技術の重要性高まる

ルメンタムの事業は「クラウド&ネットワーキング」と「インダストリアル・テック」で構成されていましたが、事業分類の再編に乗り出し、部門ごとの業績発表を取りやめています。

旧クラウド&ネットワーキング部門の主力製品は光・フォトニクスチップ、光部品、モジュール、サブシステムなどの幅広い製品です。主要顧客はクラウドデータセンター事業者、AIインフラ企業、通信事業者、ネットワーク機器メーカーなどです。

こうした製品の用途は多岐にわたりますが、やはりデータセンター内の高速接続に対応できる点が強みです。AIの急速な普及に伴い、膨大なデータ処理を支えるための高速・大容量通信の需要が急増しており、光接続技術の重要性が一段と高まっているようです。

一方、旧インダストリアル・テック部門の主力は短パルス固体レーザー、ファイバーレーザー、ダイオードレーザー、ガスレーザーなど多様なレーザー製品で、産業用途からコンシューマー用途まで幅広く展開しています。

【図表3】ルメンタム・ホールディングス[LITE]:業績推移(単位:百万ドル)
出所:LSEGよりDZHフィナンシャルリサーチ作成
※期末は6月
【図表4】ルメンタム・ホールディングス[LITE]:週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年4月3日時点)

バーティブ・ホールディングス[VRT]、デジタルインフラを構築

データセンターに不可欠な電源管理や冷却システムを提供

バーティブ・ホールディングス[VRT]は、データセンターや通信ネットワークなどに不可欠なデジタルインフラの構築を手掛けています。電力供給や熱管理といった基盤技術を中心に電源、冷却、IT管理などの分野で幅広い製品を提供しています。

電源・電力管理の主力製品は、無停電電源装置(UPS)、電源分配ユニット(PDU)、AC/DC電源システム、配電設備などです。冷却・熱管理システムでは、サーバーを冷却するための空冷システムや液冷システム(液浸・直接液冷など)が中核になっています。

エマーソンから独立後、積極的なM&Aでポートフォリオを多角化

バーティブはもともと、工場オートメーションのエマーソン・エレクトリック[EMR]の事業部門でしたが、2016年に独立し、2020年にニューヨーク市場に上場しています。独立後は積極的に企業合併・買収(M&A)に乗り出し、2018年に電源分配ユニット(PDU)の「Geist(ガイスト)」や空調設備の「Energy Labs(エナジー・ラブズ)」を買収。2025年には熱管理の「PurgeRite(パージライト)」を傘下に収めています。

バーティブはM&Aを通じて製品のポートフォリオの多角化を図っています。現在の主力は電力管理(UPSや直流電源)、熱管理(空冷・液冷システム)などのほかにも、ラック、モジュール型データセンター、エネルギー貯蔵、IT管理ソフトウェアなど多岐にわたります。

ハイパースケーラーから通信、産業まで多様な顧客基盤を構築

エンドユーザーごとに市場は大きく三つに分かれています。最初に挙げられるのがデータセンターです。顧客基盤ごとに四つに細分化され、AI開発やクラウドサービスを手掛けるハイパースケーラーではマイクロソフト[MSFT]やアマゾン・ドットコム[AMZN]、アルファベット[GOOGL]などが主要顧客です。

さらにAIワークロードに特化したネオクラウド事業者ではコアウィーブ[CRWV]やネビウス・グループ[NBIS]が主要顧客です。このほかオンプレミス型のデータセンターを持つ企業では大手金融機関などに製品・サービスを提供しています。

第二に挙げられるのが通信ネットワーク分野です。有線・無線通信事業者が音声・動画・データを配信するためのインフラを支えています。第三は商業・産業分野です。製造業、輸送、エネルギーなどの現場で、重要設備の安定稼働を支援しています。

【図表5】バーティブ・ホールディングス[VRT]:業績推移(単位:百万ドル)
出所:LSEGよりDZHフィナンシャルリサーチ作成
※期末は12月
【図表6】バーティブ・ホールディングス[VRT]:週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年4月3日時点)

エコスター[SATS]、衛星通信や有料テレビ事業を展開

ディレクTVとの合併破談も、スペースXとの合意で財務が改善へ

エコスター[SATS]は衛星通信、放送、無線通信などの分野で事業を展開しています。主な事業分野は有料テレビ、ワイヤレス通信、放送・衛星サービス、その他の4部門です。

主力の有料テレビ事業では、「DISH」や「SLING」のブランドを通じて衛星放送とインターネット配信型の有料テレビサービスを提供しています。2025年末時点の加入者数は約700万人です。

2024年にはディレクTVと合併し、米国最大の有料テレビ事業者が誕生するとみられていましたが、最終的に破談に終わっています。ただ、部門別では有料テレビ事業が稼ぎ頭で、2025年12月期の売上高は前年比9%減の97億ドル、営業利益が8%減の24億2500万ドルです。

ディレクTVとの合併が破談になったことで財務的に厳しい状況に陥りましたが、救世主となったのは、イーロン・マスク氏が率いるスペースXです。エコスターは自社が保有していた周波数帯のライセンスをスペースXに約170億ドルで売却することで合意。財務が大幅に改善するとの見方が強まっています。

スペースXとの提携を通じ、衛星通信サービスの新たな成長機会を創出

エコスターの放送・衛星サービス事業では、衛星を活用したブロードバンド通信サービスやネットワーク機器の提供、政府・企業向け通信ソリューションを展開し、航空機向け機内通信サービスなども手掛けています。スペースXとの提携を通じ、Starlinkを活用した衛星通信サービスの提供など新たな成長機会の創出にも取り組んでいます。

ワイヤレス事業では「Boost Mobile」や「Gen Mobile」などのブランドでモバイル通信サービスを提供しています。仮想移動体通信事業者(MVNO)としての事業が中心で、2025年末時点の加入数は711万件です。

【図表7】エコスター[SATS]:業績推移(単位:百万ドル)
出所:LSEGよりDZHフィナンシャルリサーチ作成
※期末は12月
【図表8】エコスター[SATS]:週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年4月3日時点)

シエナ[CIEN]、通信関連製品とソフトを総合的に提供

シエナ[CIEN]は通信事業者やクラウド事業者向けにハードウエア、ソフトウエア、サービスを総合的に提供しています。中核製品は、高速伝送を実現する光通信装置やモジュールなどの光ネットワーク機器に加え、トラフィックの制御・集約・転送の機能を持つルーターやスイッチ機器などです。

こうした製品で構成するネットワーキングプラットフォーム部門が主力事業となります。主力製品は大容量光伝送プラットフォームや光インターコネクト装置、小型トランシーバーなどです。

このほかネットワークの制御や運用の効率化を支援するソフトウエアを提供するプラットフォーム・ソフトウエア&サービス部門、ネットワーク運用の自動化と統合的な管理プラットフォームを提供するブループラネット・オートメーション・ソフトウエア&サービス部門があり、ネットワークの運用管理やサービス提供のライフサイクルを高度に自動化することが可能です。

さらにグローバルサービス部門では、ネットワークの設計、導入、運用、保守までを包括的に支援します。コンサルティングで顧客の要望を聞き、システム導入と統合、運用支援などのサービスを提供しています。

【図表9】シエナ[CIEN]:業績推移(単位:百万ドル)
出所:LSEGよりDZHフィナンシャルリサーチ作成
※期末は10月
【図表10】シエナ[CIEN]:週足チャート(移動平均線 緑色:13週、橙色:26週)
出所:マネックス証券ウェブサイト(2026年4月3日時点)