先週、映画『PROJECT HAIL MARY』を観ました。原作はアンディ・ウィアーの同名小説で、『オデッセイ』に続くSF作品です。
主人公のグレースは理科教師。目を覚ますと見知らぬ宇宙船の中におり、自分が地球を救うミッションの最後の希望だと知ります。仲間の乗組員はすでに亡くなっていました。絶望的な状況の中、たった一人で人類の命運を背負うことになるのです。
この作品の何がいいかといえば、主人公が「頭脳」だけで危機を乗り越えていくところです。筋肉でもなく、銃でもなく、数学と物理と化学の知識。未知の物質に出会えば成分を分析し、軌道計算が必要になれば手を動かして方程式を解きます。異星の生命体とすら、科学という共通言語でコミュニケーションを取る。その姿が、実に痛快でした。
思えば、科学者というのは世間的には地味な存在に映りがちです。身なりに頓着せず、白衣やくたびれたシャツで研究室にこもる。華やかなビジネスの世界とは対極にあるようにも見えます。しかし、彼らが解き明かす真理は、ときに世界の行方を左右します。新薬の開発、エネルギー問題の解決、気候変動への対策。いずれも科学者の地道な探究なくしては実現しません。外見の華やかさではなく、知の積み重ねにこそ本質的な価値があるのではないでしょうか。
作品の中でグレースは、派手なヒーローとは程遠い風貌です。ですが、目の前の問題に知識を総動員して挑む姿には、どんなアクション映画の主人公にも負けない「かっこよさ」があります。知性で世界を救う。それは、フィクションの中だけの話ではないはずです。
資産運用の世界もまた、派手さとは無縁のところに本質があります。流行に振り回されず、データを読み解き、合理的に判断する。地に足のついた知識こそが、長い目で見れば最も頼りになる武器です。科学者の静かなかっこよさに、投資の心構えを重ねて考えた、春の夜でした。
- 大塚 雄介
- コインチェック株式会社 執行役員CBDO
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早稲田大学大学院修了、物理学修士号取得。株式会社ネクスウェイでB2B向けITソリューションの営業・事業戦略・開発設計を担当。レジュプレス株式会社に参画(2017年4月よりコインチェック株式会社に社名変更)。2014年2月に取締役に就任。2018年4月にコインチェック株式会社がマネックスグループ株式会社の子会社となると同時に執行役員に就任し、マーケティング・事業開発などを統括。2021年4月執行役員を経て、2023年9月より執行役員web3Cloud事業本部長。組込型の暗号資産購入サービス「Coincheck OnRamp」をはじめとするweb3Cloud事業を管掌。2024年9月より執行役員CBDOに就任。 *CBDO(Chief Business Development Officer):最高事業開発責任者
