介入当日に5円前後と大きく円高に戻す=2022年

今回の円安局面で、日本の通貨当局が最初に米ドル売り・円買い介入に動いたのは2022年9月22日だった。この年はそれから約1ヶ月後の10月21、24日も同じく米ドル売り・円買い介入を行い、151円で米ドル高・円安を止めて反転させることに成功した(図表1参照)。

【図表1】米ドル/円の日足チャートと為替介入(2024年4~7月)
出所:マネックストレーダーFX

2022年に行われた3回の介入では、いずれも介入当日の米ドル/円が大きく変動していた。あとで実際の数字でも確認するが、介入が行われた当日の米ドル/円は、いずれも最大下落幅が5円前後と大幅だった。この最大下落幅は、その後2024年に行われた4回の介入でも基本的に共通していた。

2024年の介入局面の米ドル/円はどうだったか

2024年は4月29日、米ドル高・円安が160円を超えたところで最初の米ドル売り・円買い介入が行われた。さらに1営業日をはさみ、5月1日に再び米ドル売り・円買い介入に出動すると、その後米ドル/円は151円まで下落に向かった(図表2参照)。この時点ですでに米ドル/円は最大で約10円も米ドル安・円高に戻ったことになるため、円安の反転に成功したようにも見えた。

【図表2】米ドル/円の日足チャートと為替介入(2024年4~7月)
出所:マネックストレーダーFX

しかしその後まもなく、当時のイエレン米財務長官が「為替介入はまれであるべき」と発言した。この発言は日本の介入をけん制するものだとして、日本はもはや介入を再開できなくなったのではないかとの思惑が広がった。こうした中で米ドル高・円安が再燃し、介入が行われる前の米ドル高・円安水準を更新しました。これを受けて日本の当局は米ドル売り・円買い介入を再開し、7月11、12日と連日の介入により円安を反転させるところとなった。

介入当日の大幅円高誘導は投機円売り転換が目的か

以上、2022年と2024年に行われた米ドル売り・円買いの為替市場介入は合計7回だった。このうち6回は、介入当日の米ドル/円の最大下落幅が5円前後と大きくなった(図表3参照)。最大下落幅が2円程度と比較的小幅にとどまったのは、2024年7月12日に行われたこの局面における最後の介入が行われた日だけだった。

【図表3】米ドル売り・円買い介入が行われた日の米ドル/円(2022年~)
出所:財務省統計よりマネックス証券が作成

当時の円安は、短期売買を行う投機筋の円売りが記録的に拡大することで主導されたものだった。このため介入は、短期的に大きく円高に戻し、投機筋が円売りの損失に耐え切れず、円買い戻しに転じることを目指したものだったのではないか。その目安は、介入当日に5円程度米ドル安・円高に戻すことだったと考えられる。

介入前の水準までの米ドル反発は阻止する

もう1つ注目されたのは、この7回のうち6回は、介入当日の米ドル/円が寄り付き前の水準を引け値で回復できず、いわゆる米ドル「陰線引け」になっていたということ。介入当初は、円売りを行ってきた投機筋も損失を回避するため、さらなる円売り拡大で対抗した。その結果、介入が行われた日の米ドル/円もほとんどのケースでは引けにかけて米ドルが反発し、チャート的には長い「下ヒゲ」が出ていた。ただ介入を始める前の水準以上に引け値で米ドルが反発したのは2022年の最後の介入の1度だけで、しかもごく小幅に過ぎなかった。

介入当日に、介入を行う前の水準まで米ドル高・円安に戻ってしまうと、さすがに介入「失敗」の評価が広がりかねない。そう考えると、介入後に米ドル/円がある程度反発するのはやむを得ないとしながらも、介入開始前の水準まで反発することは阻止する。これが1つの目安になっていた可能性はあるのではないか。

介入「成功」、「失敗」を何で見極めるか

以上、2022、2024年の米ドル売り・円買い介入について考察してみた。その中で、(1)介入当日に5円前後と比較的大幅に米ドル安・円高に押し戻すこと、(2)介入当日に介入開始前の水準以上の米ドル反発を阻止することは、円安阻止や反転という介入目的を達成するための目安になっていた可能性もあると感じられる。

今回、仮に160円程度で日本の通貨当局が単独の為替介入に動いた場合、2024年までに比べると、円安の阻止や反転は客観的には困難のようにも見える。では、ついに介入「失敗」となるかの目安は、これまで見てきたことからすると、(1)介入当日に5円前後と大きく米ドル安・円高に戻せない、(2)介入当日に介入を行う前の水準まで米ドル/円が反発する、ということが目安になるのではないか。