トランプ政権発足後広がる米ドル「総合力」の下落
BIS(国際決済銀行)が公表している米ドルの総合力を示す実質実効相場は、トランプ政権が発足した2025年1月の115.1ポイントから、2026年1月には106.9ポイントまで7%以上下落した(図表1参照)。米ドル高・円安傾向が続く中では分かりにくいが、米ドルは円以外の多くの通貨に対しては下落し、総合力で見るとむしろ下落が拡大する形となっている。
こうした中で、米ドルの実質実効相場は、過去5年の平均値である5年MA(移動平均線)近辺まで下落してきた。米ドルの実質実効相場を見ると、上昇トレンドが続く中では5年MAがサポートになる一方で、下落トレンドが続く中では逆にその5年MAがレジスタンスとして機能してきた。その意味では、このまま米ドルの実質実効相場が5年MAを大きく割れるようなら、2011年から続いてきた上昇トレンドが、トランプ政権が始まった2025年からついに下落トレンドへ転換した可能性が高まる。
以上のように見ると、トランプ政権開始後の米ドル安は一時的なものではなく、2011年以来の米ドル安トレンドへの転換が試される重大局面を迎えている可能性もありそうだ。そうであるなら、それは米ドル/円にも重要な影響をもたらす可能性があるかもしれない。
米ドル安局面と米ドル高局面では異なる「円安の終わり方」
米ドルの実質実効相場で見ると、前回の米ドル安トレンドは2002~2011年にかけて展開した。その中で、米ドル高・円安の循環的なピークは、2002年と2007年の2回あった。一方で、それ以外の循環的な米ドル高・円安のピークは1998、2015、2024年の3回だったが、これは米ドルの実質実効相場が上昇トレンドを展開している局面で起こった現象だった(図表2参照)。
米ドルの実質実効相場の下落トレンドにおける2002、2007年の循環的米ドル高・円安のピークは、米ドル/円が5年MAを1割前後上回ったところで起こったのに対し、上昇トレンドにおける1998、2015、2024年の循環的米ドル高・円安ピークは、米ドル/円が5年MAを3割以上と大きく拡大する中で起こった(図表3参照)。
米ドル/円が5年MAを3割以上上回るのは、経験的には循環的な米ドル高・円安の限界を示すものだった。以上からすると、米ドル高トレンドが展開する中では、循環的な米ドル高・円安も限界に達するまで続く可能性があったのに対し、米ドル安トレンドにおける循環的な米ドル高・円安は、限界に達する前に終わる可能性があったということになるのではないか。
円安トレンド転換に影響しそうな米ドルへの不信感
すでに見てきたように、2025年のトランプ政権開始から、米ドル安トレンドに転換した可能性が出てきた。これは、トランプ大統領の国際秩序を無視したような言動が続く中で、米ドルへの不信感が広がっていることを考えると違和感はないだろう。そうであるなら、中長期的な米ドル安トレンドが展開する中で、それが米ドル高・円安から米ドル安・円高へのトレンド転換をもたらす可能性もあるのではないか。
