高齢になると「誤薬」が起きやすい理由は?

親が高齢になると持病が増え、処方される薬の種類も増えるため、飲み忘れや飲み間違い、飲み過ぎといった薬に関するさまざまなトラブル、「誤薬」が起きやすくなります。特に高齢者は薬の影響を受けやすいため、誤薬による副作用は時として命に関わる危険性もあります。

岩手で暮らす私の母は認知症を患っており、ひとり暮らしのため、服薬管理は特に大切です。今回はわが家で実践している誤薬を防ぐための3つの対策と、想定していなかったトラブルについてご紹介します。

【対策1】「薬の一包化」をする

最初は、複数の薬を一つの袋にまとめる「薬の一包化」から始めるとよいと思います。

高齢になると、処方された薬を紙の袋から取り出し、包装シートから錠剤やカプセルを取り出すという作業も難しくなります。1日に何度も同じ作業を繰り返すうちに、色や形状の似た薬を飲み間違えたり、床に落として紛失したりすることもあります。

また、認知症の症状がある場合、薬の保管場所が分からなくなったり、服薬したかどうかを忘れたりすることも珍しくありません。

あらかじめ、同じタイミングで飲む薬を一包化しておけば、1つの袋に入っている薬を飲むだけでよいので、誤薬のリスクを減らせます。まずは、かかりつけ医に相談してみましょう。医師の指示があれば、薬局で一包化してもらえます。

インターネットなどで販売されている専用の袋を使えば、高齢者自身でも薬の一包化は可能です。ただし、自分で薬のセットを行う場合は、入れ間違える可能性もあるので注意が必要です。

【対策2】お薬カレンダーで服薬管理を「見える化」する

次に活用したいのが、お薬カレンダーです。曜日と時間帯(朝、昼、夕、寝る前)ごとにポケットが分かれているタペストリー型のカレンダーで、一包化した薬などをポケットに入れて服薬管理をします。

お薬カレンダーを壁に貼っておけば、自分がどこまで薬を飲んだか一目瞭然になり、飲み忘れにもすぐに気づけます。お薬カレンダーは、薬局やインターネットで購入できます。

【対策3】薬剤師による訪問サービスを利用する

薬の一包化やお薬カレンダーで、親が問題なく服薬できているうちはよいのですが、認知症が進行すると飲み忘れや飲み過ぎ、飲むタイミングが分からなくなるなどの症状が出てきます。

そこで頼りになるのが、薬剤師による訪問サービスです。薬剤師が自宅まで薬を届けてくれ、薬の保管も薬局が行うため、紛失の心配がありません。

また、薬剤師が自宅を訪問した際、お薬カレンダーなどで服薬状況を確認し、飲み忘れた残薬も回収してくれるので、誤った量を服用する心配はありません。

高齢になると複数の病院を掛け持ちするようになり、重複した薬が処方され、薬の飲み合わせが気になる場合があります。そんなときも薬剤師に相談すれば、医師に連絡をして薬の種類を減らすなどの調整をしてくれます。

また、親が薬を飲みづらそうにしていた場合も、「半分に割る」「粉末にする」といった飲み方の工夫を提案してくれたり、服薬回数の多さから飲み忘れが気になる場合は、薬を飲むタイミングを朝と夜の2回にまとめたりなどの提案もしてくれます。

訪問サービスを利用する場合は医師か薬局に直接申し込みをするか、ケアマネジャーに相談してみましょう。

また、お薬手帳アプリを利用すれば、家族が要介護者の飲む薬の種類や量を把握しやすくなります。訪問サービスの利用と併せて、お薬手帳アプリにも対応しているかを薬局に聞いてみましょう。病院でもらった処方箋を写真で撮ってデータ送信すると、後日薬剤師が一包化した薬を自宅まで届けてくれるため、薬局での待ち時間もなく非常に便利です。

3つの対策でも防げなかった予想外の誤薬

これら3つの対策をすることで、認知症の母の服薬管理は可能だと考えていました。ところがある日、予想外のトラブルが起きたのです。

母がお薬カレンダーのポケットに入っていた3回分の薬を、一度に服用してしまいました。慌てて薬剤師に連絡したところ、処方量が少なかったため大ごとには至りませんでしたが、場合によっては命に関わるかもしれない誤薬でした。

これ以降、お薬カレンダーを使った服薬管理は中止し、新たにお薬ケースを用意して母の手の届かないところに置くようにしました。服薬のタイミングになったら、私や介護職の方が母に薬を渡す運用に変更してからは、誤薬は起きていません。

お薬カレンダーには薬を入れていませんが、その代わり、母が飲み終えた薬の袋を入れています。それによって、薬剤師が薬を服用したかどうか確認できるようになっています。

薬剤師の訪問サービスのおかげで薬の不安が解消

現在も週1回、薬剤師が母の住んでいる実家を訪問しています。お薬を届けてくれるだけでなく、母の血圧や脈拍など簡単な健康状態も確認してくれるので、離れて暮らす私も安心です。

母が通う病院の数が増えており、服用する薬の種類も増えています。わたし自身も薬剤師の訪問に時間を合わせて立ち会い、定期的に新しい薬の効能や飲み合わせ、副作用などの説明を家でまとめて教えてもらえるのはとても助かります。

3つの対策の中で、薬剤師の訪問サービスは特に重要です。離れて暮らす親の服薬に不安を感じている方は、ぜひ活用してみてください。