「基本シナリオ」と「不規則シナリオ」

52週MAを5%以上割り込んだ過去の3ケース

米ドル/円は、2024年7月に161円まで上昇したが、その後9月にかけて一時139円まで大きく下落、その中で過去1年の平均値である52週MAを大きく割り込んだ(図表1参照)。この局面で、米ドル/円は52週MAを最大で6%以上下回った。

【図表1】米ドル/円と52週MA(2000年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

長く続いてきた上昇トレンドから下落に転じた米ドル/円が、52週MAを5%以上と大きく割り込んだのは、2000年以降では主に3回あった。2002、2007、そして2016年だ。このうち前2者は、その後の米ドル/円の上昇も最大で52週MA前後にとどまり、下落傾向は3~4年続いた(図表2参照)。

【図表2】米ドル/円の52週MAかい離率(2000年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

最後の2016年のケースだけ、米ドル/円の下落傾向は1年程度で終わり、その後は52週MA前後での展開が数年にわたり続いた。このケースは、2016年11月の米大統領選挙で共和党のトランプ氏が勝利し、その後2017年から4年間のトランプ政権1期目が展開した時期と重なる。

「基本シナリオ」は下落トレンドへの転換、だが…

以上から分かるのは、長く続いてきた上昇から下落に転じた米ドル/円が、2024年9月にかけて52週MAを5%以上と大きく下回った動きは、過去の似たケースを参考にすると、最短でも1年程度、基本的には3~4年続く下落(米ドル安・円高)トレンドヘ転換した可能性が高いと言えそうだ。

ただしその場合、トレンドと逆行する一時的な上昇は52週MA前後までとどまるところ、今回の場合2024年11月の米大統領選挙でのトランプ氏勝利を前後し、米ドル/円は52週MAを5%以上と大きく上回るまでには至らなかったが、52週MAを上回る状況が2~3ヶ月と長く続いた。

52週MAを大きく、長く米ドル/円が下回った場合、それは3~4年続く下落トレンドへ転換したという意味であり、トレンドと逆行する一時的な上昇はせいぜい52週MAを大きく、長く上回らない程度にとどまるというのが「基本シナリオ」だ。それに不規則な値動きが生じたケースが、2016年と今回でともにトランプ氏が影響している可能性がある点というのも興味深いところではある。

52週MAとの関係から考えられるこの先の米ドル/円の見通しが「基本シナリオ」となるなら、米ドル/円は2024年7月の161円で上昇トレンドが終わり、この先は一時的な上昇もせいぜい52週MA(2月21日現在で152.4円)前後にとどまり、2027年にかけて下落トレンドが続くイメージになりそうだ。

ただトランプ氏の影響などから、「不規則シナリオ」になるなら、この先はしばらく52週MA前後での明確なトレンドのない展開が続く可能性もあるのかもしれない。