少し前から気になっている米国の不動産指標に「フリップ率 (flipping rate)」というものがあります。米国では、中古住宅販売件数が9年半ぶりの上昇率となるなど盛り上がっていますが、一部で更に強い数字を示しているのがこの「フリップ率」です。
もともと「フリップする」とは、「ひっくり返す」という意味です。米不動産業界では、過去12か月のうちに2度以上不動産を売買することを指し、その不動産売買全体に占める割合が「フリップ率」です。要は一年以内の転売比率です。
今年の第2四半期中に米国内で"フリップ"された住宅は全売買の5.5%に上り、1軒当たり平均の儲けは、買い値の32%で、過去最高の62,000ドル(約700万円)となりました。今年年初まで絶好調だった日本のリノベーション物件でも2割程度とみられるので、かなり良い成績です。
しかしアメリカの場合、トランプ効果で人々の投資意欲が高まってきたのでまだ安心感があります。問題は欧州です。GDP成長率は1%未満と低迷しているにも関わらず、英国や北欧などの主要都市の地価上昇率は8%を超えています。賃料でみても、ロンドンの45m2の単身用マンションの賃貸価格の平均は15万円強で、東京の9万円の1.6倍となっています(www.expatistan.com)。低金利の成せる業でしょう。
欧州の低金利はまだ当面続きそうですが、昨今の政治情勢等をみると、どこまで期待が持つのか疑問です。ロンドンでは、局所的には統計以上に不動産価格が暴落している模様ですし(アイルランド政府機関等発表)、欧州システムリスク理事会も11月末に欧州全体の不動産価格に警鐘を鳴らし始めました。間違いなく、欧州の不動産価格は来年のリスク要因の一つになりそうです。