先週(12月2日週)の振り返り=3年連続「12月の円高」の鍵とは?

先週の米ドル/円は、150円をはさんだ一進一退となりました(図表1参照)。安値は148.6円、高値は151.2円。前週の急落を受けて下値をトライしたものの、大きく続落するまでには至らなかったのでしょう。米ドル/円は、過去2年連続で12月に米ドル安・円高となりましたが、2024年はどうなるのでしょうか。

【図表1】米ドル/円の日足チャート(2024年9月~)
出所:マネックストレーダーFX

過去2年の12月の円高の要因と2024年の違い

過去2年連続で「12月の円高」をもたらした主因は、年末にかけての円売りポジション手仕舞いだった可能性があります。その点で言えば、2024年は過去2年とは違うようです。

CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、12月3日現在で小幅ながら買い越しに転換しました。つまり、円売りポジションの手仕舞いは、今回は早々に終了した可能性があります(図表2参照)。では、3年連続の「12月の円高」とはならないのでしょうか。

【図表2】CFTC統計の投機筋の円ポジション(2022年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

ここで1つ注目したいのが米金利の動向です。米金利については、トランプ氏が米大統領選挙で勝利したら上昇するとの予想が多かったと思いますが、いまのところは逆に低下傾向となっています(図表3参照)。なぜトランプ氏の勝利後の米金利上昇予想は、これまでのところ「外れた」ようになっているのでしょうか。

【図表3】米10年債利回りの推移(2024年7月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

米金利上昇予想が外れている理由

過去2年、米金利は年末にかけて比較的大きく低下しました。11月頃から大きく低下に向かった米金利は、2022年は12月半ばまで、そして2023年は年末まで低下が続きました(図表4参照)。2022年の米金利低下が比較的早く一巡し反発に転じたのは、この年の12月下旬の日銀金融政策決定会合で長期金利抑制策の上限緩和という「サプライズ」があり、金利急騰となったことに連れた影響でしょう。

【図表4】米10年債利回りの推移(2022年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

以上のことから、米金利には年末にかけて低下する傾向が過去2年見られました。その観点でみると、大統領選挙でのトランプ氏勝利後、ここまでの「予想外の米金利低下」は、過去2年見られた傾向の影響もあったと考えられます。では、年末にかけての米金利低下をもたらした要因は何かといえば、それは米国債券のポジション調整などではないでしょうか。

米国債券価格上昇=利回り低下の一因になった

2022年に歴史的なインフレが起こって以降、金利上昇リスクへの警戒から債券売りが急拡大しました。ただし、CFTC統計の投機筋の米10年債ポジションを見ると、年末にかけては売り越しが一巡し、縮小に向かう傾向がわずかながら確認できます(図表5参照)。「売られ過ぎ」となった米国債券を、年末にかけて買い戻すことで、債券価格上昇=利回り低下の一因となったのではないでしょうか。

【図表5】CFTC統計の投機筋の米10年債ポジション(2022年1月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

先週(12月2日週)の米ドル/円は下げ渋る展開となったものの、一方で米金利低下などに伴う日米金利差米ドル優位縮小は続きました(図表6参照)。したがって、「12月の円高」が3年連続となるかは、年末にかけて米金利低下が続くかが鍵になるのではないでしょうか。

【図表6】米ドル/円と日米10年債利回り差(2024年7月~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

今週(12月9日週)の注目点=ECB会合、米CPI発表など

今週、来週(12月16日週)と年内最後の金融政策決定会合が集中します。より注目度の高い、日米の金融政策決定会合は来週になりますが、今週はユーロ圏、スイス、カナダ、豪州、ブラジルなどの会合が予定されています。

また米経済指標の発表で注目されるのは、CPI(消費者物価指数)、PPI(生産者物価指数)というインフレ指標でしょう。今のところ、12月6日発表の米11月雇用統計の結果などから12月FOMC(米連邦公開市場委員会)では3回連続の利下げが決定されるとの見方が優勢なようですが、CPIなどの結果を受けて、そうした見方が変わらないかが焦点になります。

151円台は、2022、2023年と米ドル/円が高値を記録したことなどからテクニカルな分岐点になりやすい水準です。一方下落サイドは、翌週にFOMCを控える中で米金利低下を手掛かりに、先週の安値の148.6円を割れるかが焦点でしょう。以上を踏まえて、今週の米ドル/円の予想レンジは147~152円で想定したいと思います。