リスクは損益の振れ幅の目安であって、収益の目安ではないという話をしましたが、ではリスクとは「大きさ」であって、「方向」は本当に無いのでしょうか?リスクが1つであればそう言えます。しかし複数のリスクを取ると、それらの中にはお互いに干渉して全体のリスクが若干小さくなることがあります。例えばAという株のリスクが100で、Bという株のリスクが50だったとします。AとB両方を持つと、リスクの総額は最大で150、最少で50になります。(通常は130とか140でしょう) 50になる場合とは、Aが1円上下すると、Bは常に逆向きに1円上下する(下上する?)場合です。
これがノーベル賞も取ったモダン・ポートフォリオ理論の基本です。このような特性をよく理解して分散投資することにより、全体のリスクを押さえ気味にしながらリターンを向上させることが可能になります。長い期間に亙って安定した成績を残す投信とは大概こういうものです。
- 松本 大
- マネックスグループ株式会社 取締役会議長 兼 代表執行役会長、マネックス証券 ファウンダー
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ソロモン・ブラザーズ・アジア証券会社を経て、ゴールドマン・サックス証券会社に勤務。1994年、30歳で当時同社最年少ゼネラル・パートナー(共同経営者)に就任。1999年、ソニー株式会社との共同出資で株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)を設立。2004年にはマネックス・ビーンズ・ホールディングス株式会社(現マネックスグループ株式会社)を設立し、以来2023年6月までCEOを務め、現在代表執行役会長。株式会社東京証券取引所の社外取締役を2008年から2013年まで務めたほか、数社の上場企業の社外取締役を歴任。現在、米マスターカードの社外取締役、Human Rights Watchの国際理事会副会長、国際文化会館の評議員も務める。