為替は小動き、金利は乱高下=トランプ時代

ドナルド・トランプ氏は2016年の米大統領選挙に勝利し、2017~2020年の4年間、政権を担うことになった。このトランプ政権時代の4年間、米ドル/円は概ね100~120円のレンジ内で推移した(図表参照)。意外に感じるかもしれないが、トランプ政権時代の為替相場は比較的狭いレンジでの小動きが続いた。

【図表】米ドル/円と日米金利差(2016~2020年)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

大統領選勝利決定後に起きた「トランプ・ラリー」

トランプ時代の為替の動きとして最も印象的だったのは、むしろ政権スタート前、大統領選挙での勝利決定後に起こった「トランプ・ラリー」と呼ばれた動きだったのではないか。勝利決定直前には1米ドル=100円割れ寸前まで暴落に向かいそうだった米ドルは、すぐに反発に転じると、逆にほんの数週間で120円近くへ急反騰に向かった。

この「トランプ・ラリー」が起こった理由として特に2つを指摘したい。1つは行き過ぎた悲観論の反動、そしてもう1つは選挙公約だったトランプ減税を織り込む動きということだ。

大統領選挙の少し前まで、破天荒な言動を続けるトランプ氏の勝利はほぼ難しいと見られていた。それでも、「まさかのトランプ大統領誕生」、そんな「まさトラ」が現実味を増す中で、それが万が一にも実現した場合には、株価や米ドルの暴落は不可避との見方が広がっていた。

「Brexitショック」が「トランプ・ショック」を回避させたか?

2016年は、この米大統領選挙の前に金融市場はすでに暴落を経験していた。6月に行われた英国の国民投票でEUからの離脱が賛成多数で可決されたことに伴う「Brexitショック」と呼ばれた動きの中で、例えば米ドルは100円割れの暴落となった。

その記憶が残る中で、「Brexitショック」を遥かに凌ぐ「トランプ暴落」が警戒されたが、結果は逆だったのではないか。「Brexitショック」ですでに暴落した金融市場には、短期間で「トランプ・ショック」も起こすだけの余力がなかったのかもしれない。

米大統領選挙の開票が進み、時差の関係で「まさトラ」が現実味を増してきたのは日本の株式市場が開いている時間帯だった。株は大幅に下落し米ドル/円もあっという間に100円割れ寸前まで下落、100円割れすら単なる通過点に過ぎないとの見方が当時は一般的だったと思われる。

ところが、欧米の株式市場が始まる頃からムードは大きく変わった。株価は反発に転じ、そして100円割れを回避した米ドル/円も勢いよく上昇に向かい始めたのだった。なぜ「トランプ暴落」は起こらなかったのか。それはほんの数ヶ月前の「Brexitショック」により、マーケットにはさらなる暴落の余力が限られていたことが大きかったのではないか。

警戒された「トランプ暴落」が不発となる中で、マーケットが反応したのはトランプ氏の選挙公約、「トランプ減税」に対してだった。大型減税への期待から米金利は大きく上昇し、それに伴う金利差米ドル優位拡大に沿った形で米ドルは急騰に向かった。

まだ正式にトランプ政権がスタートする前に起こったこの「トランプ・ラリー」と呼ばれた大相場は、これから始まるさらなる大相場の前座に過ぎないと、当時は感じられたかもしれない。

それは結果的に見ると、金利にとっては全くそうだったが、為替、米ドルにとっては違った。その理由は、やがて米金利と米ドルの連動が変わったためだろう。ということで、次回はトランプ時代に起こった「悪い金利上昇」について確認してみたい。(続く)