◆関東はどっぷりと梅雨のど真ん中。この時期の結婚式は大変である。ドレスや振り袖姿のお嬢さんたちは難儀なことだろう。それでもジューン・ブライド(6月の花嫁)に憧れる新婦を祝福しに雨のなか駆けつけるのだから、あなたたちの友情には頭が下がる。
◆そもそも「ジューン・ブライド」というのは欧米だからこそ、成り立つ話である。欧米の初夏6月は一年のうちで最も爽やかな季節。結婚式にはベストシーズンである。ところが日本の6月は梅雨時にあたる。冒頭に述べたように結婚式には不向きである。欧米の風習をそのまま持ってきても、日本の風土には合わないのである。
◆日本のカップルもその辺りの事情をよく分かっていて6月の挙式数は実は少ない。結婚式が季節的に落ち込むのをカバーするために業界としてジューン・ブライドを喧伝しているという面もあろう。その点、結婚情報専門誌『ゼクシィ』(リクルート)はさすがである。この時期の誌面にはジューン・ブライドの「ジュ」の字さえないという。考えてみれば当然である。『ゼクシィ』は一年中結婚の情報を伝える雑誌だ。ある月だけフィーチャー(特別扱い)してしまうと、その他の月がやりづらくなる。結婚にふさわしい特別な月なんかない、思いたったら吉日、というアプローチが正解であろう。
◆「株式投資で危険な月はいつですか?」と訊かれると僕はこう答える。「それはなんと言っても『セル・イン・メイ』の5月です。だからその前の1~4月も警戒したほうがいい。実際は6月まで売りが続くのですが。秋も統計上パフォーマンスが悪いです。9~11月は要警戒。夏は夏枯れで7-8月はぱっとしません。一年納めの師走は大波乱。上がるか下がるかどっちにしろ大荒れです」「じゃあ、株式投資で安心できる月はないということじゃないか!」「え?いや、そうゆーわけではなく...5月は『セル・イン・メイ』で...」
◆結婚にふさわしい特別な月はない。株式投資に安全な月もない。だから、投資も結婚も、思いたったら吉日...って、そっちのほうがよっぽど危ない!
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆