◆通算11枚目となるaikoの新作アルバムが昨日発売された。タイトルは『泡のような愛だった』。そう聞いて、カネと欲にまみれた愛憎劇の末、さぞや派手に弾けたんだろう...と想像したあなたは、立派なバブル世代のオジさんである。だいぶ感覚がズレている。

◆そもそも近年は「泡」=「バブル」ではなく、「フロス」である。2005年、当時のFRB議長アラン・グリーンスパンは過熱する米国の住宅市場を評して「全国的なバブルは見られないが、地域によってフロスの兆候がある」と述べた。バブル(bubble)はシャボン玉のような、いつ弾けてもおかしくない泡。一方、フロス(froth)は、ビールを上手に注いだ時にできる細かいクリーミーな泡。aikoだからもっとガーリー(女子的)な喩えをすると、カプチーノのミルクを泡立てた泡。その上にハートのラテアートを描いたりなんかして。

◆週初の日経新聞は「ちらつくバブルの芽」という記事を載せた。日米独、先進国の長期金利が名目成長率を下回る水準にまで低下した。過去同様の局面ではバブルの芽が育っていた - そう記事は主張する。確かにその兆候は至るところにある。債券バブルは誰の目にも明らかだが、悪夢のひとつだったスペインの不動産市況すら回復の兆しがある。フロスからバブルへ。その帰趨を占うことが、マーケットでの成否の鍵であることは今も昔も変わりはない。

◆aikoのアルバム『泡のような愛だった』の「泡」とはなんだろう。ひとつのヒントは彼女のコンサートツアーのタイトルだ。「Love Like Pop」 - ポップのような愛。やっぱり弾けるんじゃないか(>_<)!

マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆