◆アイドルグループAKB48の握手会イベントで、メンバー2人とスタッフが刃物を持った男に切り付けられる事件が起きた。凄惨な事件についてメディアは犯人の「心の闇」や、犯罪を生む「現代社会の歪み」にフォーカスを当てがちである。そうしたアプローチの必要性は認めたうえで、報道の主旨としては、やはり警備の強化が重要という当たり前のことを訴えるに尽きると思う。
◆ボディーチェックや持ち物検査を徹底する。ID(身分証明書)の提示を求める。9・11同時多発テロ発生直後の米国では過剰とも思えるほど厳しいセキュリティチェックが行われた。空港で、オフィスビルで、それらのチェックはひどくストレスフルだった。経済活動の効率性も著しく損なわれただろう。
◆社会のコストと思うしかない。整然とした説明がつかないが、そういう世の中になってしまったという厳然たる事実。そこから目を背けることはできない。社会の変化(進化とは言わない)とそれに伴うコストの増加。息苦しくもある。不快に感じるときもある。僕らはそういう時代を生きている。
◆小欄の連載を開始して一週間余り。「朝コーヒーを飲みながら読むのが楽しみです」との嬉しいお便りもいただいた。できるだけ投資に役立つ話を届けたい。オチがつけられたら最高である。朝のひととき「新潮流」を読んでその日一日を楽しい気分で始めてもらいたい。が、しかし、時には今日のように苦い社会問題も取り上げる。愉しい話題ではない。生きていれば、そういう朝もある。
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆