◆日曜日の夕方、プロゴルファーの青木功と池田勇太がコースをラウンドしながらゴルフについて語り合うという番組を観た。僕が感心したのは池田プロのこういう言葉であった。「僕らプロは後ろに立たれても平気だから、どうぞ真後ろから見て下さい、という。真後ろから見ないと男子プロの球筋のすごさはわからないから。ギャラリーが近くにいると打ちにくい、なんていうのはプロ失格。どんなに近くで見られても、ナイスショット、いやスーパーショットが打てなきゃプロじゃない」
◆世の中にストラテジストはたくさんいるが、僕ほどお客様の好き嫌いがはっきり分かれている者も珍しいのではないかと思う。ファンもいればアンチファンもいる。先週「日本株 底入れ宣言」というレポートを出したら、早速、反論や批判が多く来た。
◆そのこと自体は結構である。ひとの見方は様々だ。買いだと思う人がいる一方、同じ値段を見て、売りだと思うひとがいる。だからこそマーケットで商いが成り立つ。それが商売の基本であるがゆえ証券マンというのは異なる意見を排除しない。むしろ歓迎する気風すらある。反論は構わないが、こういう投稿には苦笑させられた。「底入れ宣言だって?笑わせるな。お前と俺とどっちが正しいか、勝負だ。結果は3か月後の相場で判明するだろう」
◆僕は見られるのが仕事である。テレビで、新聞で、ウェブサイトで。ひとの目にさらされ、コメントをチェックされ、相場観を評価される。ネットの向こう側に隠れている匿名の相場師さんとは、違う次元で仕事をしているのである。プロというのは見られてナンボ。その点はプロゴルファーと同じである。違うのは常にナイスショットが打てるわけではないということだ。ダフリ、池ポチャなんてのはざらにある。いちばん大きな違いは、僕らのOBは右か左かではなく、上か下かという点である。
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆