5年MA±3割以上の「異常値」

2022年10月にかけて、1米ドル=150円以上に上昇した米ドル/円は過去5年の平均値である5年MA(移動平均線)を3割以上上回った。5年MAを3割以上上回ったのは、1980年以降でもこれで3回目に過ぎない。そして、その3回とも5年MAを3割以上上回ったところで米ドル高・円安は終わった(図表1参照)。

【図表1】米ドル/円の5年MAかい離率(1980年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

5年MAを3割以上上回ったところが米ドル高・円安の限界圏で、2022年10月に150円を越えた米ドル高・円安も限界圏に達して、いつ終わってもおかしくないところで米金利のピークアウトや日本の通貨当局による大規模な米ドル売り介入などをきっかけとして終わったと言うのが正確な理解ではないか。

これは逆方向、つまり米ドル/円の下落についても概ね当てはまるものだった。以上から分かるのは、米ドル/円は、5年MAを軸に±3割の範囲内を循環するパターンが続いてきたということだ。

「異常値」更新未遂を起こした「異例の事態」だった2023年の米景気

5年MAを3割以上上回るor下回るという限界的な円安、円高、それは過去40年余りで5回しかなかったので「異常値」と言っても良いのではないか。そんな「異常値」の更新には5~24年と、やはり長い時間がかかっていた(図表2参照)。

【図表2】米ドル/円の推移(1980年~)
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成
ところが2023年は、僅か1年で2022年10月に記録した5年MAを3割以上上回る限界的米ドル高値・円安値更新寸前の動きとなったが、大幅利上げにもかかわらず、成熟した先進国の米国で四半期成長率が「5%成長」といった異例の高成長となった「強すぎる米景気」が背景にあったと考えられる。

ギリギリで米ドル高値更新が未遂に終わったのは、改めて5年MAを3割以上上回って記録した米ドル高値、円安値が簡単には更新できない「異常値」であるかを再確認したということになるかもしれない。

以上のように見ると、2022年10月に記録した151円を本格的に米ドル高・円安方向に更新するのは、2023年の強すぎる米景気といった「異例の事態」のようなことがない限りは、早くても5年以上先、つまり2027年以降という、かなり先の見通しになるのではないか。