◆新潮流 - 英語で「ニューウエーブ」。辞書に当たると、「新しい波。芸術や政治運動で、新しくきわだった傾向・流行。ヌーベルバーグ」とある。どれも、このコラムのタイトルの意味としてはそぐわない。そんな大それた意図でつけたタイトルではないのである。
◆「広木隆の『投資の潮流』」というコラムの連載を1年以上も中断していた。またコラムを書き始めるにあたって、放り出したままの『投資の潮流』を、装いを新たに復活させようと思ったのだ。長く置き去りにしていた忘れ物をようやく取りに戻ったというところである。だからこのコラムのタイトルは「新・広木隆の『投資の潮流』」として然るべき。正しく略すなら『新・潮流』である。
◆最近の資本市場における「潮流(ウエーブ)」は増配や自社株買いなどの株主還元である。決算が悪くても積極的な株主還元策を発表した企業の株は買われる。稼いだ利益を全額、配当と自社株買いに充てると発表したアマダの株価は急騰した。
◆学生時代、帆走競技に明け暮れた僕からすれば、潮流というのは文字通り「潮の流れ」であって「波」ではない。潮流=ウエーブではなく、カレント(Current)である。波は果てれば崩れゆく。浜で割れるか、岸に当たって砕けるか。潮の流れは砕けない。ずっと流れていく。日本でようやく緒についたばかりの、株主還元重視の潮目が、途切れることなくずっと続くことを願う。
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆