注目は2024年中の利下げ見通し

FOMC(米連邦公開市場委員会)では、2回の会合ごとにメンバーの経済見通しである「ドット・チャート」を公表する。前回は9月会合だったので、この12月会合でそれが更新されることになる。

前回9月の「ドット・チャート」では、インフレ率(コアPCE)と政策金利のFFレートの2023年末の予想値は、それぞれ3.7%と5.6%だった(図表1参照)。これに対して、10月のコアPCEデフレータは前年比3.5%、そして現行のFFレート誘導目標は5.25~5.5%となっている。インフレ是正が予想より僅かながら順調に展開したことから、0.25%の利上げも予想より1回少なくなったとの解釈になるだろう。

【図表1】9月FOMCの「ドット・チャート」
出所:FRB資料をもとにマネックス証券が作成

9月の「ドット・チャート」では、2024年末のコアPCE上昇率が2.6%へ一段と低下するとの見通しの中で、FFレートは年末に5.1%へ低下するとの予想となっていた。単純に年末時点で比較すると、インフレ是正が一段と進む中で、2024年は0.25%×2回の利下げを想定しているといったイメージになるだろう。では、これが12月の「ドット・チャート」でどのように変わるか。

「物価の番人」であるFRB(米連邦準備制度理事会)が最も意識するインフレ率は、9月の見立てよりインフレ是正が順調に推移しているようだ。その意味では、インフレ対策の金融引き締め方向に政策姿勢を大きく戻す可能性は低いのではないか。

一方で、9月FOMCの後に確認された7~9月期の米実質GDP伸び率(改定値)は前期比年率5.2%と、四半期成長率としては異例の高い数字となった。こうした中で景気の先行指標という側面のある株価は、NYダウなど年初来高値更新となっている。このような強い景気は、インフレを再燃させるリスクのあるものだ。その意味では、9月「ドット・チャート」より利下げ見通しを拡大する可能性も低いだろう。

以上を踏まえると、FOMC「ドット・チャート」の2024年の利下げ見通しは、上述のような9月時点の0.25%×2回から1回に減る可能性はありそうだが、「利下げなし」を意味するゼロ回まで減る可能性は低いのではないか。一方で、利下げ回数が3回に増える可能性も低そうだ。これをいわゆる「タカ派」、「ハト派」の評価に当てはめると、以下のような感じではないか。

<12月FOMC「ドット・チャート」の2024年末のFFレート予想値とその評価の関係>
5.3%(5.25~5.5%=据え置き)=予想よりタカ派
4.8~5.1%(4.75~5.25%=0.25%×1~2回の利下げ)=予想の範囲内
4.6%(4.5~4.75%=0.25%×3回の利下げ)=予想よりハト派

個人的には、上の分類における「予想よりタカ派」「予想よりハト派」の評価になる可能性は低いと考えている。では、2024年中の利下げが0.25%×1~2回という「予想の範囲内」となった場合の為替相場の反応はどうなるかと言えば、基本的には米金利低下、米ドル売りの反応になるのではないか。経験的に、米国の金融政策は利下げでも利上げでも1度で終わったことは少ないため、マーケットは連続利下げの始まりと受け止める可能性が高いと考えられるからだ。

「最初の利下げ」のタイミングは、最長の場合2025年1月の予想も

一方で、「2024年は利下げなし」という「予想よりタカ派」の評価になる可能性は、「予想よりハト派」の評価になる可能性よりは高いかもしれない。7~9月期の「5%成長」などは、「最初の利下げのタイミング」を遅らせる可能性のあるものだからだ。

1990年以降で、「最後の利上げ」から「最初の利下げ」まで18ヶ月と最も長い時間がかかったのは、1997年3月~1998年9月のケースだった(図表2参照)。この期間に、当時のグリーンスパンFRB(米連邦準備制度理事会)議長による「米国だけが繁栄のオアシスでいられるということが果たしてあるだろうか」という有名な台詞があった。日欧の景気が低迷する中、「米経済の一人勝ち」の状況が長期化したことで「最初の利下げ」まで長い時間がかかったと考えられるが、最近の状況と似た感じがある。

【図表2】米国の金融政策の転換
※黄色は利上げ。青色は最後の利上げから最初の利下げまでの間隔
出所:リフィニティブ社データよりマネックス証券が作成

仮に、今回もその時と同じく2023年7月「最後の利上げ」から18ヶ月後に「最初の利下げ」になるなら、それは2025年1月となるため、「2024年中の利下げなし」となる可能性も低いながらありそうだ。そうなった場合は「予想よりタカ派」との受け止め方により米金利上昇、米ドル買いの反応となるのではないか。