選挙まで小動き=選挙前後から大きく動き出す
この「米大統領選挙アノマリー」の典型のような展開になったのは、やはり2016年「まさかのトランプ大統領誕生」として「まさトラ」が起こったケースではないか。この年は6月に「Brexit(英国のEU離脱)ショック」が起こり、米ドル/円が100円割れの急落となるなど、11月の大統領選挙以前も大きく動く局面はあったものの、それでも選挙の半年前は10円程度のレンジでの値動きにとどまっていた。
ところが、「まさトラ」が現実になると、それまでのレンジを米ドルは大きく上抜け、一気に120円を目指す急騰となった。その後「トランプ・ラリー」と呼ばれる米金利と米ドルの急騰劇は、まさに大統領選挙を前後して起こったのだった(図表1参照)。
この2016年以上に、大統領選挙を前後して小動きから大相場へ豹変したのが2012年のケースだろう。ただしこれは、米大統領選挙の結果がきっかけとなったわけではなく、むしろ日本の政治が大相場のきっかけとなったケースだ。
2012年は、11月の米大統領選挙までうんざりするほどの小動きが続いていた。ところが、オバマ再選が決まった米大統領選挙の終了後から、米ドル/円は大きく上昇に向かった(図表2参照)。きっかけとなったのは、日本の安倍自民党政権の誕生だった。後に「アベノミクス大相場」と呼ばれた円安、株高の大相場は、結果的には2012年の米大統領選挙終了後間もなく始まったものだった。
また、2008年は金融史上では「リーマン・ショック」が起こった年として知られているだろう。そんな「リーマン・ショック」の株暴落、米ドル暴落も、結果的には11月の大統領選挙を前後して急拡大に向かうものだった(図表3参照)。
米大統領とは、「世界のリーダー」と言って良い存在だろう。それが決まる前、あたかも「嵐の前の静けさ」のように、米大統領選挙前の米ドル/円は方向感の乏しい小動きが続くものの、11月の選挙前後からは、「新たなリーダー」誕生を見極めて途端に一方向へ大きく動き出す。それが、米ドル/円「米大統領選挙アノマリー」の基本的な背景だったかもしれない。
大相場の可能性と、大統領選アノマリーの狭間で起こること
前回の2020年は「コロナ・ショック」が起こり、更に大統領選挙の結果も現職のトランプ大統領が中々敗北を認めず混乱が続くといった異例尽くしの展開が続いた。そのためか中々選挙後も米ドル/円の新たな方向性は出なかったが、今から振り返ると、2022年にかけて約32年ぶりの150円を超える歴史的円安は、2021年1月、つまり2020年11月の米大統領選挙終了の後から始まったものだった(図表4参照)。
米ドル/円は、2022年は最大値幅が40円近くにも拡大する大相場となり、そして2023年の最大値幅も20円以上に拡大した。ただ、これまで見てきた「アノマリー」からすると、2024年は米大統領選挙まで意外に方向感が出にくい状況が続く可能性もあるかもしれない。