◆先日、驚愕するニュースがあった。和歌山県のある市で58歳の保健福祉部次長が強姦未遂の疑いで逮捕された。保健福祉部次長というおカタイ肩書きの男が強姦未遂を犯したから驚いているわけではない。驚いたのは被害者が80歳代の女性であったからだ。
◆強姦未遂というのは卑劣な犯罪であり、被害者の女性はさぞや怖い思いをされただろう。心からお見舞い申し上げます。そのうえでひとこと。非常にナイーブな問題なので言い方が難しいが、誤解を恐れずにあえて言えば、その女性は80歳代にしてなお男性から襲われるくらい女性としての魅力を備えていたということである。老人ホームで一人の女性を巡って二人の男性が争いになり傷害事件に発展した、なんてニュースもちょっと前にあった。色恋沙汰の騒ぎはいくら歳をとってもなくならない。これもシニア世代が元気でアクティブな証であろう。無論、強姦未遂や傷害事件というのは言語道断だが。
◆先日のセミナーでお客様から質問があった。「確定利付き商品のような安全資産と、株式のようなリスク性資産の資産配分はどのように考えればよいのでしょうか?」それに対してフィナンシャル・アドバイザーの深野康彦さんが回答した。「あくまでひとつの目安ですが、100からご自身の年齢を引いた数字がリスク資産の比率、とお考えになってください。例えば30歳のひとは時間を味方につける運用が可能ですので70がリスク資産、30が安全資産という配分になります。一方、70歳のひとはリスク資産を30にとどめ、70を安全資産にしておくのが適切でしょう。」
◆それを聞いた僕は言った。「100引く年齢=リスク資産の比率ということならば、120歳のひとはリスク資産の比率はマイナス20。つまり、全体の20に相当する分、株の空売りをしないといけませんね」
深野さん「ええ?!」
これは120/20(ワン・トゥエンティ/トゥエンティ)とか130/30(ワン・サーティ/サーティ)と呼ばれる戦略で実際に存在する。
◆130/30戦略とは100の資金に対して30のショート・ポジションをとり、空売りから得た30の資金と当初の資金を合わせた130の資金でロング・ポジションを取る戦略のこと。ネットのポジションはあくまで100だが、合計160のエクスポージャー(簡単にいうと相場を張っている額)をとることが可能になる。最近でこそ鳴りをひそめているが、リーマンショック前には先進的な運用手法として注目を集めた。米国最大の年金基金であるカルパースが130/30戦略を導入し、大きな話題を呼んだこともある。
◆130の安全資産に30の株ショートの組み合わせ。結構、悪くないポジションではないか。いくつになっても女性の奪い合いをするほどアグレッシブなシニア層のなかには、こういう先進的な運用手法をとる投資家が現れるかもしれない。但し、この130/30戦略、適した年齢は深野さんの理論によると130歳ということになるけれど。
マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木 隆