年間約10万人が介護離職、働き盛りの40代・50代も多数

家族の介護を理由に、仕事を辞めて介護に専念することを介護離職と言います。全国で年間約10万人が介護離職しているとも言われていて、特に働き盛りである40代、50代が多く含まれています。介護離職する主な理由として、次のようなものが挙げられます。

・介護と仕事の両立は、体力的に厳しかった
・介護の終わりが見えず、仕事との両立は続けられないと思った
・介護が始まり、以前のように仕事の責任を果たせなくなった
・自分以外に介護できる人がいなかった

介護で会社を辞めてしまうと、長期の空白期間ができる可能性があり、再就職できなくなる場合もあります。住宅ローンの返済や子どもの教育費など、生きていくためには月々の収入が必要なため、多くの専門家は、介護が始まっても仕事を辞めるべきではないと助言します。

40代、50代は自分のキャリアも家族の生活も守らないといけない場合が多く、介護と仕事の両立を必死で続けようとしますが、それでも介護離職してしまう人はいます。

育児・介護休業法などで体制が整っても離職してしまうケースが

こうした介護離職を防止する助けとなるのが、育児・介護休業法です。これは、介護と仕事の両立がしやすいよう、休暇の取得や時短勤務などを支援する法律です。日雇い労働者を除くすべての労働者に権利がありますが、労使協定で制限している企業もあります。一方、企業によっては、優秀な人材を確保しておくために、法定以上の休暇日数を付与する独自の制度を設けて介護離職防止の対策を行っています。

いずれにしても、こうした休暇は、自分で介護するための休暇ではありません。介護のプロであるホームヘルパーやデイサービスなどを使い、仕事に影響が出ないよう、介護の体制作りをするための休暇です。

しかし介護の体制を整えても、職場の理解が得られず、介護離職するケースがあります。休暇の取りづらさ、同僚に仕事の負担をかけることへの負い目などを感じ、仕事を続けにくくなるのです。

介護と仕事の両立がしやすい職場環境を目指しているかどうかは、経営トップの方針や人事などの取り組みを見れば、ある程度分かるでしょう。全く動きがないようなら、いくら待っていても職場の理解は得られないかもしれません。実際、私が以前勤めていた会社も介護と仕事の両立は難しく、これといった取り組みも行われていない状況でした。

「2度目の介護」に備えて投資を勉強

私は40歳のとき、祖母と母の遠距離介護のために介護離職しました。すぐに会社を辞められた理由のひとつは、ポートフォリオを組んでいたことです。

貯蓄や国内株式、国内REITなどを保有し、金融商品の割合を可視化していました。介護離職して収入が一時的に途絶えたとしても、保有している金融資産で数年は生活できるシミュレーションができていたのです。

実は40歳の介護離職は2度目で、1度目は父が脳梗塞で倒れた34歳のときでした。幸い、父が回復したおかげで社会復帰できたのですが、その頃からいつ次の介護が始まっても大丈夫なように投資の勉強をしていました。

こうした経験から、介護と仕事を両立するための準備として、会社の休業制度を調べておくことや介護保険サービスについての勉強に加えて、マネーリテラシーを高めておくべきだと考えています。

介護への理解がない職場で、終わりの見えない介護と仕事の両立を続けていくのは、至難の業です。仕事も介護も続けられなくなるほどの大きなストレスを抱えてしまうかもしれません。そんなとき、マネーリテラシーを高めて安定した資産運用ができていれば、一時的な収入減にも対応でき、仕事の時間をセーブしながら介護する働き方も選べるでしょう。

自分の生活や人生を守るための「介護と投資」

最後に、私が運営している介護ブログ「40歳からの遠距離介護』に寄せられたコメントを紹介します。

「我が家は、父も俺も介護をする為に仕事を辞めちゃいましたからね。さすがに毎晩徘徊されると、両親と俺の3交代でも耐えられませんでした。精神的に追い込まれ、働けない事で経済的にも追い込まれる。結果俺が選んだのは、自分が働けない分お金に働いてもらう方法でした」

介護離職して働けなくなった介護者が、介護と投資を両立させた話です。簡単なことではありませんが、これからの時代に必要な発想だと思いました。

介護が始まる前からマネーリテラシーを高めておくことで、自分の生活や資産、そして人生も守れるようになると思います。介護が始まった後の生活や働き方を想定しながら、マネーリテラシーを高めておきましょう。