今後のEV開発に必要不可欠なイーアクスルとは
ニデック(6594)(旧日本電産)が社運をかけて開発している電気自動車(EV)向け基幹装置である「E-Axle(イーアクスル)」がいよいよ利益に貢献し始めてきた。
イーアクスルはモーターとギア(減速機)、インバーターを組み合わせて一体化したもの。インバーターとは、EVではモーターの回転速度を制御する装置のことを指す。自動車メーカーではEVを作る際に、性能が高く、装置間の相性の良さなどを考えてモーターやギア、インバーターを選択するが、あらかじめ一体化したイーアクスルを採用することでこれらの課題を解決することができる。特にギア構造は“歯車の塊”といわれるほど複雑で、組み合わせるモーターの特性を合わせることが難しいとされてきた。
EVメーカーはイーアクスルを採用することで、車体に乗せて製品に電力を供給すれば、タイヤに繋がるドライブシャフトの回転トルクを発生させるところまでを、一製品で完結することができる。つまり、車両メーカーはイーアクスルを採用することで、短期間でEVを開発することができることになる。
ニデック、赤字転落だった車載事業が110億円の黒字転換へ
ニデックでは「EVの心臓部」ともいえるイーアクスルを業界に先駆けて2019年4月に発売。シェア獲得とそのための先行投資を優先してきたことで、部門の赤字が続いていた経緯がある。
同社が7月13日に発表した2024年3月期の第1四半期(4~6月)決算では売上高が前年同期比5%増の5660億円、営業利益は同35%増の601億円となった。注目は、前四半期まで赤字に転落していた車載事業が110億円の黒字に転換したことだ。
2023年3月期に約300億円の営業赤字だったイーアクスルは、4~6月期に約5億円の営業黒字を確保。先行投資が、いよいよ投資の回収フェーズに入ってきた。EV大手との取引拡大が実を結んできている。
日本のイーアクスルのリード役はニデックだが、ほかにもイーアクスルを展開している企業がある。そこで、今回はイーアクスルに関連する銘柄をピックアップする。
明電舎(6508)
2023年4月に、150kW社対応のEV向け駆動ユニット「MEIDEN e- Axle」を本格的に販売開始。重量は業界トップクラスの軽量69kgキログラムで、小型化による車両消費電力を改善。また、高さ方向を抑えた設計により、3列シート車にも搭載が可能としている。企業の発表資料では販売活動に注力し、早期に採用車種の拡大を図るとともに、出力ラインナップの充実化や量産体制の整備に取り組むとしている。
ユニバンス(7252)
ミッション、アクスルなど駆動系ユニットの専門メーカー。2019年7月に、EVメーカーのGLMと協業し、機電一体型の駆動用モーター イーアクスルを搭載したEV試験車両を開発したと発表している。
一般的にイーアクスルは1つのモーターで構成される。同社が開発した「DMM(Dual Motor Multi Driving modes)Axle」は2つのモーターと2段の変速ギアの組み合わせた4つの最適な駆動モードを、走行状態に応じてシームレスに自動で切り替え、低電費でありながら高い動力性能を実現するという。
アイシン(7259)
トヨタ系の自動車部品大手。2019年にデンソーと共同でイーアクスルの開発・適合・販売に特化した新会社ブルーイーネクサスを設立。2020年に量産化をスタート。既に「レクサス」「CH-R」などに搭載されている。
BEV、ハイブリッド、プラグインハイブリッド、FCEV(燃料電池車)に向けたフルラインナップで挑む。2022年に「第一世代」として「機電一体型」イーアクスルを量産開始。2025年には効率を高めた「第二世代」を投入予定。
IJTT(7315)
いすゞ自動車系列の部品メーカー3社が統合して発足した自動車部品メーカー。鋳造・鍛造、機械加工、産業エンジン組み立てなどを製造している。また、商用車やバス向けイーアクスルにも展開。報道によれば商用車向けは乗用車向けに比べてモーターのトルクや出力が大きく、用途によってきめ細やかな対応が必要とのこと。既に国内商用車メーカーからの採用が決まったという。量産も開始している模様。
住友ベークライト(4203)
住友系の樹脂加工大手。イーアクスルの材料ソリューションに展開。部品を樹脂化したイーアクスルを自社作製し、データの取得、関連部材のセット販売を狙う。樹脂化することでインバーター筐体を小型化、軽量化できるなどのメリットがある。低振動、低騒音にも貢献している。