トヨタ自動車、全固体電池搭載の次世代EVを2027年にも実用化へ

トヨタ自動車(7203)が6月中旬に、次世代電池の本命とされる「全固体電池」を搭載した電気自動車(EV)を、2027年にも実用化する方針を明らかにした。

トヨタ自動車は従来、全固体電池はハイブリッド車(HEV)に先行搭載するとしてきたが、今後はEVでの実用化を目指すとのこと。報道などによれば、全固体電池EVは10分以下の充電で約1,200kmを走行でき、その距離は現在のEVの2.4倍と飛躍的に伸びる。

経済産業省、電池関連の技術開発や設備投資を補助

経済産業省は6月16日付でトヨタ自動車や豊田自動織機(6201)などに対して、技術開発などの総事業費約3300億円のうち、最大1178億円を補助すると発表している。一般的なEV車載電池向けの他、全固体電池など次世代車載用電池も含まれる。

EVなどに搭載されるリチウムイオン電池は、正極、負極、ショートを防ぐための絶縁材(セパレーター)、発電のためのイオンが流れる電解液という4つから構成される。液体の電解液を固体にしたものが全固体電池だ。液体に比べ、発火や爆発の危険がなくなることで固体電解質の方が安全性は高い。固体なので積層することもできる。エネルギー密度が高く、同じ大きさの電池なら航続距離を伸ばすことができる。

一方、課題は耐久性で、充放電は数千回が必要といわれるが、現在は数百回程度しか行えない模様だ。今後は量産技術の開発がポイントとなる。

トヨタが本格的に動き出したことや、経産省の電池開発促進策などを背景に、全固体電池の実用化に向けた動きが加速する可能性がある。そこで今回は、そのような全固体電池に関連した銘柄をピックアップする。

トヨタ自動車(7203)

全固体電池の開発で先行。世界最多の1,000以上の関連特許を有している。2020年夏に世界で初めて全固体電池を搭載した車両でナンバーを取得。試験走行を行っている。

【図表1】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年7月6日時点)

三井金属鉱業(5706)

全固体電池向け固体電解質「A-SOLiD(エー・ソリッド)」を手掛けている。同社が長年培った電池材料技術を活かして開発した。2021年11月にサンプル出荷を開始したが、当時はトヨタ自動車へ供給すると報道されている。2023年2月にA-SOLiDについて、埼玉県・上尾市で量産試験装置の生産能力増強を発表している。企業側の発表資料によれば、サンプル供給後にEV用途で国内外の顧客からのニーズが急増したとしている。具体的な数字は公表していないが、量産試験用設備の生産能力を倍増するという。トヨタ自動車の全固体電池向けについて、これまでの経緯から同社製が採用されている可能性が高い。

【図表2】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年7月6日時点)

豊田自動織機(6201)

トヨタ自動車とバイポーラ電池を共同で開発。バイポーラ型蓄電池は、1枚の電極基板の表と裏にそれぞれ正極と負極を有するシンプルな構造に特長がある。このため、従来の電池と比較して材料の削減が可能であり、また、体積当たりの容量の向上により、重力エネルギー密度は従来の約2倍になるとの見方もある。現在の蓄電池は正極と負極が別のモノポーラ型。トヨタ自動車は先の発表でバイポーラ構造を全固体電池でも採用する方針を示したと報じられている。経産省の助成金の対象になっている。

【図表3】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年7月6日時点)

豊田通商(8015)

トヨタ自動車のEVに使われるリチウムなどのレアメタルをほぼ一手に供給。全固体電池になっても、レアメタルは引き続き重要。

【図表4】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年7月6日時点)

出光興産(5019)

2023年6月19日に、全固体電池向け固体電解質の能力増強を発表した。2021年11月から稼働している小型実証プラント(千葉県・市原市)について2024年度内の予定で生産能力を増強する他、2023年7月に千葉県・袖ヶ浦市にあるリチウム電池材料部で第2プラントの稼働を開始する。全固体電池の開発を進めている自動車・電池メーカーなどへ固体電解質を供給する。

【図表5】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年7月6日時点)

本田技研工業(7267)

全固体電池について、約430億円を投じて2024年春に実証ラインを立ち上げ、2020年代後半には全固体電池を搭載したEVを発売する目標を掲げている。企業のホームページでは「Honda自らが全固体電池を開発し、車載可能な全固体電池の量産技術を確立」などとしている。

【図表6】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年7月6日時点)

ジーエス・ユアサ コーポレーション(6674)

2022年11月に開催された第63回電池討論会において、全固体電池のキーマテリアルである全固体電解質の実用化に向けた研究成果を評価され、「電池技術委員会賞」を受賞。窒化物を組み合わせることで耐水性の向上、ハロゲン化物を組み合わせることによるイオン電導率の向上を図るなどの評価結果を報告した。この発表が全固体電池の飛躍的な進歩をもたらす成果として高く評価されたとのこと。

【図表7】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年7月6日時点)

日産自動車(7201)

2025年までに全固体電池のパイロット生産工場を立ち上げ、2026年までに初期開発を完了。2028年から本格的な量産を開始し、EVに搭載する予定である。

【図表8】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年7月6日時点)