深刻化する鳥インフルエンザの影響

卵不足や価格の高騰が長期化している。国内では鳥インフルエンザの流行で、2022年から卵不足が深刻になっている。また、鳥の飼料であるトウモロコシの価格高騰もコストアップの要因となり、価格も上昇傾向が続く。

JA全農によれば、2023年4月の価格は350円(1キロ・東京Mサイズ)となり、1年前の約1.7倍になっている。長期間価格が安定し、「物価の優等生」といわれていたのは、今は昔という状況にある。

2023年は鳥インフルエンザの感染力も強く、供給には予断を許さない状況が続く。報道によれば、2022年10月以降、2023年5月上旬までに全国で約1740万羽が殺処分された。これは鶏卵用のニワトリの約12%に相当するという。

鶏卵価格の正常化は2024年以降の見通し、代替卵に新たな期待

これを受けて卵を原料とするマヨネーズ大手のキユーピー(2809)は値上げを実施し、すかいらーくホールディングス(3197)が展開するファミレス「ガスト」はオムライスの販売を休止、スーパーでは卵の特売を取りやめるなど影響が広範囲に及んでいる。森永乳業(2264)は「焼きプリン」の出荷を制限している。

国内については終息に向かうとの見方もあるが、供給量の増加や飼料価格のピークアウトで鶏卵価格が正常化するのは2024年以降との見方が少なくない。

ただ、5月22日にはブラジル政府が好病原性鳥インフルエンザH5N1型の感染が確認されたとして、全土に180日間の緊急事態を宣言している。ブラジルは世界最大の鶏肉輸出国であり、日本は輸入鶏肉の約7割をブラジルに依存している。

卵については消費者がスーパーで購入する「生食用」は輸入されていないが、加工食品向けの「液卵」として国内で流通が始まっていると伝えられている。ブラジルで感染したのは野生の鳥に限定されているというが、養鶏場への感染が確認されれば、日本にとってさらなる需給ひっ迫要因になる可能性がある。

帝国データバンクによれば、6月6日時点でこのような「エッグショック」に変化が出始めている。卵メニューの休止は、調査開始以来、初めて減少に転じたという。加工用殻付き卵の輸入や、「代替卵」を使ったメニューの開発が進むなど、選択肢の広がりも見せているとのこと。そこで今回は、卵の代替需要や、その周辺商品に関連した銘柄をピックアップする。

カゴメ(2811)

トマト加工品の国内最大手。2023年4月に、植物由来の「Ever Egg(エバーエッグ)」を発売している。にんじん、白いんげん豆を用いて、独自技術の「野菜半熟化製法」(特許出願中)により、卵の“ふわとろ食感”や色合いを実現したという。同社は2021年4月に植物由来の食品を生産するTWO(非上場)との提携を発表。「Ever Egg」も連携して商品化した。

【図表1】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト 移動平均線13週、26週(2023年6月15日時点)

キユーピー(2809)

2021年6月に原材料の大部分を植物由来で作ったスクランブルエッグ風商品「HOBOTAMA(ほぼたま)」を発売。もちろん卵は不使用で、元々は業務用市場向け商品。豆乳加工品をベースにスクランブルエッグのような見た目と食感を再現した。シェフが丁寧に手作りしたような半熟感を表現しているという。炒飯の具としても使える。アレルギーなどさまざまな理由で卵を食べられない方向けの商品だが、卵不足で需要増となっている。

また、卵不使用のマヨネーズ風調味料「キユーピーエッグケア」も展開している。いずれも当初はビーガンやアレルギー対応として発売したものだが、卵不足が商品の知名度向上に寄与している。報道ではプラントベースエッグのうち「卵」の世界市場は2030年に1兆2000億円になる(2022年に約2600億円)とされる。

【図表2】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト 移動平均線13週、26週(2023年6月15日時点)

オイシックス・ラ・大地(3182)

安全・安心に配慮した青果物を中心にネット販売を主力としている。2021年4月にデータサイエンスと食品製造技術を活用したフードテックベンチャー「グリーン・カルチャー」に出資。オイシックス子会社の投資ファンドも株主となっている。グリーン・カルチャーは2021年12月に、植物性ゆで卵「植物卵」のプロトタイプの開発に成功したと発表している。味や質感、ビジュアルにもこだわり、見た目はゆで卵そのもの。今後、量産化を目指していくという。グリーン・カルチャーには亀田製菓(2220)も出資している。

【図表3】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト 移動平均線13週、26週(2023年6月15日時点)

ニッスイ(1332)

水産大手で、加工や養殖にも強みがある。食品事業も展開。魚のすり身で作った「卵焼き」を模したおかずである「おさかなで作ったたまご焼のかわり」を製造販売している。カニ風味かまぼこの製造ノウハウを活用し、本物の卵焼きのような食感を実現しているという。1パック2枚入りの2連パックが特徴で、小分けされているので弁当などにそのまま使える。

【図表4】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト  移動平均線13週、26週(2023年6月15日時点)

コメダホールディングス(3543)

名古屋発祥の喫茶店チェーン。植物由来の食材に特化した店舗「KOMEDA is(コメダイズ)で、2021年10月から代替卵を使ったミックスサンドイッチを提供している。スクランブルエッグ風の卵が野菜などとともに挟んである。キユーピーの豆乳が主原料の「HOBOTAMA(ほぼたま)」を使用。食した人によれば「見た目も味も、卵とまったく区別がつかなかった」という感想がある。

【図表5】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト 移動平均線13週、26週(2023年6月15日時点)