G7広島サミット開幕、環境問題への取り組みに注目

5月19~21日の3日間、広島県で主要7ヶ国首脳会議(G7広島サミット)が開催される。ウクライナ情勢などの地政学リスクや、欧米での金融システム不安といった短期的な問題に対する話題も重要だが、中長期的な気候変動問題も重要なテーマとして注目される。日本はG7議長国として、環境問題への取り組みを積極的にアピールする場になる可能性がある。

世界各国で需要高まる水素導入計画

これに先立ち、政府は4月4日に政府が次世代の脱炭素燃料として有力な水素の新たな導入目標の案を公表した。それによると2040年に現状の6倍の1,200トン程度に増やす意向で、5月末にも正式に決定するとしている。今後15年間に官民で15兆円の投資計画を検討するという。

政府は2030年度の発電量のうち、水素とアンモニアで約1%をまかなう方針だ。現状の水素供給量は年間約200トンで、2040年に1,200トンへ増加を狙う。

岸田首相は4月の関係閣僚会議で「世界に先駆けて国家戦略として策定した水素基本戦略を、5月末をめどに改定する」と強調したとされる。

欧州連合(EU)では、2023年3月にCO2と水素から作る合成燃料を使う場合、2035年以降もガソリン車など内燃機関自動車の販売を認めることを決めた。

また、EUでは2030年までに水を電気分解して水素を作る装置について、その製造能力を4000万キロワットにする方針だ。米国でも水素の製造から輸送、貯蔵までを一貫して実証するために80億ドルを投じる見通しになっている。

なお、G7広島サミットを前に4月に開催されたG7気候・エネルギー・環境相会合では数値目標などへの進展はなかった模様。G7本番では、日本は議長国として問題解決への道筋を示すことが期待される。そこで、今回は水素、アンモニアに関連した銘柄をピックアップする。

岩谷産業(8088)

水素事業のパイオニア。水素の可能性に早くから注目しており、1941年の水素販売を皮切りに、水素の製造、サプライチェーンの構築などを展開。液化水素では国内唯一のメーカーで、圧縮水素でも国内トップシェアを誇る。

水素は液化することで水素ガスの800分の1の体積となり、輸送や貯蔵効率が格段に向上する。2006年に大阪府堺市で、合弁会社を通じて国内初の商業用液化水素プラントとして営業運転を開始。全国に水素ステーション網を広げるなどインフラ整備で先行している。

【図表1】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年5月18日時点)

三菱重工業(7011)

2023年4月に岩谷産業と革新的な水素供給システムを構築するために、液化水素昇圧ポンプの開発・販売に向けた覚書を締結することで合意した。

液化水素昇圧ポンプは、水素を液体状態で昇圧することによって、気体の水素を昇圧する方式に比べてエネルギー消費量を約10分の1に抑えることができ、環境負荷を低減できるとのこと。三菱重工が開発した液化水素昇圧ポンプを用いて、国内向け水素ステーションの最適化や各施設を合理化したパッケージ開発を両社で進めている。

【図表2】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年5月18日時点)

エア・ウォーター(4088)

産業ガス事業大手。北米などで急成長している水素需要を獲得するため、液化水素タンクやトレーラーなどの水素関連機器を独自技術で開発。水素ステーション事業者などに提供し、実績・ノウハウを構築している。

2023年4月に英国で産業用ガス・LNG(液化天然ガス)の輸送機器を製造販売する「M1社」を完全子会社化すると発表した。M1社の買収で拠点整備を行い、2024年から欧州で液化水素関連機器の販売を開始する。

【図表3】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年5月18日時点)

三菱化工機(6331)

石化装置中心のエンジニアリング企業。新型高性能小型オンサイト水素製造装置「HyGeia(ハイジェイア)- A」を用いた燃料電池車向け水素ステーション建設に注力している。

同社で長年培った水素製造技術の実績、知見を結集したハイジェイアは、都市ガスやLPG(プロパンガス)を原料として水素を製造する。改質効率は世界屈指で、水素ステーションでの専有面積も半分に削減できるとしている。

【図表4】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年5月18日時点)

第一実業(8059)

電力やプラント関連に強い機械商社。環境対応ではアンモニア関連の事業に進出する。2023年1月に資源大手のINPEXが新潟県柏崎市で行うブルー水素・アンモニア製造・利用一貫実証試験向けに使われるアンモニア合成設備を受注。

第一実業が出資するつばめBHBの技術を活用する。アンモニア(NH3)は成分の中の多くの水素を含み、貯蔵や持ち運びが容易。既に化学原料や肥料として活用されているため、輸送インフラも整っている。

【図表5】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年5月18日時点)

ダイハツディーゼル(6023)

船舶用ディーゼルエンジンが主力事業。同社や日立造船(7004)などが2023年3月に、「アンモニア分解による水素生成技術を応用したアンモニアの高度燃焼技術の研究開発」を共同研究する契約を締結。

4月には輸送の難しい水素を利用しやすくするため、アンモニア燃料から水素に改質し、水素混焼もしくは水素専焼機関とするシステムの開発を行うと発表している。

【図表6】週足チャート
出所:マネックス証券ウェブサイト(2023年5月18日時点)