反落リスクについても確認=メキシコペソ/円
メキシコペソ/円の上昇が続き、3月に記録したこの間の高値を更新してきた。主因は、3月末から米ドル/円が緩やかながら上昇傾向となっていることだろう。米ドル/円が上昇傾向となると、米ドル以上に高い金利の魅力があるメキシコペソの買いが対円で強まるパターンが、このところ繰り返されている。その意味では、メキシコペソ/円がどこまで上昇するかは、米ドル/円の上昇傾向が続くかどうかが大きな目安になりそうだ。
逆に言うと、米ドル/円が急落に転じると、メキシコペソ/円もそれに巻き込まれる可能性が高い。2022年11月以降で、メキシコペソ/円が急落に転換したのは2022年11月7日週と2023年3月6日週の2回あったが、ともに米ドル/円が急落に転換したタイミングと一致していた(図表1、2参照)。
以上のように見ると、米ドル/円が上昇傾向で展開している局面では、メキシコペソ/円は米ドル/円以上に上昇し、逆に米ドル/円が急落に転換するとメキシコペソ/円は米ドル/円以上に急落するリスクがありそうだ。
もう1つ、上述のような2回のメキシコペソ/円急落への転換に共通したのは、短期的な「上がり過ぎ」の反動だった。90日MA(移動平均線)かい離率を見ると、メキシコペソ/円は同かい離率がプラス10%に近付くと短期的な「上がり過ぎ」懸念が強まるが、上述の2回のメキシコペソ/円が急落に転換したのはまさにそういったケースだった(図表3参照)。
具体的には、2022年11月10日からメキシコペソ/円が急落に転換した時、そして2023年3月9日からメキシコペソ/円が急落に転換した時、それぞれ直前の90日MAかい離率はプラス7%以上に拡大していた(図表4参照)。5月12日現在のメキシコペソ/円の90日MAかい離率は6.5%なので、徐々に短期的な「上がり過ぎ」懸念が強まり出している点には注意が必要かもしれない。
メキシコペソ/円は2020年3月の「コロナ・ショック」後に記録した4円台からすでに8割以上もの大幅高となっている。この記録的な上昇相場は、おおむね52週MAでサポートされてきた。その52週MAは足元で7円程度(図表5参照)。
急落に転じた場合でも、まだこの52週MAを大きく割れない限りはあくまで一時的な下落に過ぎない可能性が高いだろう。逆に言えば、52週MAを大きく割り込む、具体的には7円を完全に下抜けるようなら、これまでの上昇トレンドにはない現象が起こったということで、ついにこの歴史的上昇相場が終わった可能性が出てくるのではないか。