現在の日本は「超高齢社会」の状態にあります。今回はこの状況を支えている企業やサービスについて考えてみたいと思います。

驚くべきスピードで到達した日本の超高齢社会

高齢者とは、年齢が65歳以上の人を指します。社会の中で高齢者の割合が増加することが「高齢化」です。

高齢者の割合が全人口の7%を超えると「高齢化社会」と呼ばれ、その2倍の14%を超えると「高齢社会」、さらにその3倍の21%を超えると「超高齢社会」となります。現在の日本はすでにこの段階に達しています。

日本の高齢者人口は、7%から14%になるまでに24年しかかかりませんでした(1970年~1994年まで)。これは世界史的に驚くべき速度だそうです。同じ状況に達するのにフランスは115年かかりました。スウェーデンは85年、米国は72年、イギリスが46年かかったのですが、それが日本は24年という極めて短い期間で到達してしまいました。

すでに21%の「超」級も超えて30%に近づいています(2022年9月で29.1%)。まさに世界最高の堂々たる超高齢社会を築き上げているのです。

日本の超高齢社会が抱える問題と今後の課題

社会を高齢化させる要因はいくつか考えられます。1つが出生率の低下です。15歳~49歳までの女性の年齢別出生率を合計した「合計特殊出生率」が将来人口の目安とされます。合計特殊出生率が2.0を維持していれば将来人口は横ばい、2.0を下回ると人口は自然減に向かいます。

総人口が減少することで高齢者の割合が増加します。日本の場合は人口減少に加えて、第二次世界大戦直後の1947~1950年に出生したベビーブーマー、いわゆる「団塊の世代」が高齢化することで超高齢社会に拍車がかかっています。

そのことが日本の社会に大きな変化をもたらすことになります。2030年頃に団塊の世代が死亡ピーク年齢を迎えます。75歳以上の後期高齢者が急速に増加し、都市部の高齢化が進み、高齢者の単身世帯数がいま以上に顕著となるでしょう。

医療保険や年金など社会保障制度の重要性は高まる一方です。しかし、医療や介護に要する費用は抑えることが難しく、何も手を打たなければ社会は財政的に厳しい局面を迎えることになるはずです。医療、介護サービスの質を落とすことなく、給付の伸びを抑える方向に向かわなくてはなりません。

スポーツウェア、フィットネス、介護施設など健康寿命を支える銘柄とは

そこで、近年注目されているのが「健康寿命」という考え方です。平均寿命ではなく健康寿命、すなわち「ある一定のレベル以上の健康な状態であと何年生きられるか」という指標です。「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」と定義されています。

2019年の日本人の平均寿命は男性が81.41歳、女性が87.45歳です。1990年以降は毎年0.2歳ずつ平均寿命が延びています。

これに対して、2019年の健康寿命は男性が72.68歳、女性が75.38歳です。平均寿命との差は男性が8.73年、女性が12.06年となり、この間が健康でない期間、いわば「不健康寿命」となります。不健康な状態で過ごす余命をいかに短くするか、「超高齢社会」の日本ではそれが求められているのです。

健康な状態で長生きするために、厚生労働省は「+10(プラステン)」を推進しています。「+10」とは、今よりも10分間だけ多く身体を動かすことです。それが死亡リスクを2.8%、生活習慣病やがんの発症を3.6%低下させ、健康寿命を延ばすことに繋がります。それが「+10」です。

18~64歳の人であれば、例えば出社前の早朝に散歩やジョギング、ラジオ体操をする。あるいは庭の手入れを行うことで「+10」が実行できます。

その他、通勤時には駅まで早歩きをする、自転車で通勤する、仕事中はこまめに動く、できるだけ階段を使う、トイレは遠くの場所のものを使う、お昼の休憩時間には散歩に出かける、食事に出る、帰宅時は歩幅を広く歩く、一駅手前で下車する、などです。

65歳以上の人であれば、家の中でも洗濯や掃除をキビキビ行う、家事の合間に「ながら体操」をする、テレビを見ながら筋トレやストレッチを行う、歩いて買い物に行く、子どもや孫の送り迎えをする、などがあります。

ちょっとした工夫で日常的に身体を動かすことが大切です。それが健康寿命を延ばし、糖尿病、がん、脳卒中の生活習慣病のリスクを下げ、できるだけ介護保険のお世話にならずに暮らす手段の1つとなっていくのです。

超高齢社会を生きていくには、毎日少しでも身体を動かすことが大切です。身近な運動習慣と関連する銘柄としては、ウォーキング・ジョギングシューズのアシックス(7936)、同じくミズノ(8022)、スポーツウェアのデサント(8114)が真っ先に思い浮かびます。いずれも業績は順調に伸びています。

フィットネスジムでは、女性に人気のカーブスホールディングス(7085)、Fast Fitness Japan(7092)がコロナ禍から急速に業績が回復してきました。

超高齢社会でいざという時の頼みの綱は介護施設です。東京、大阪、神戸の大都市圏で介護施設を展開するチャーム・ケア・コーポレーション(6062)、ケア21(2373)、セントケア・ホールディング(2374)をこの分野での注目企業として挙げてみたいと思います。

 

参考文献:「超高齢社会のリアル」(鈴木隆雄著、2019年、大修館書店)
     「2025年、高齢者が難民になる日」(小黒一正編著、2016年、日本経済新聞出版社)
       厚生労働省「e-ヘルスネット」