マネックス証券では、「人生100年時代の財産管理」をテーマにした座談会を定期的に開催しています。今回は、シニア世代(70歳以上)と子世代(30歳~59歳)のお客さまにご参加いただいた過去4回の座談会の内容から、資産承継や相続、介護に関するそれぞれの世代の考え方を紹介します。

家族で将来のことをすでに話し合っている方も、これから話し合おうと考えている方も、それぞれの世代の考え方の違いを知ることで、対話がしやすくなるかもしれません。ぜひご参考にしていただければと思います。

資産承継、「現金」「現物」どちらがよいか

資産承継について、渡す(受取る)なら「現金」か「現物」どちらがよいかをお聞きしました。

――シニア世代の方は、保有している有価証券や不動産をそのまま持ち続けたいですか。それとも近い将来、承継のために現金化する予定ですか。

シニア世代の意見

・現金にしておいた方が引き継ぎやすいと思いますが、投資の楽しみがなくなってしまうので、今は現金化を考えるのは難しいです。

・認知症予防のためにも投資は続けたいし、含み損もあるので現金化は考えていません。

・不動産を複数保有しており、賃貸業を営んでいます。子にそれらの不動産を残した場合、同様に賃貸業ができるか心配ですので売却も検討しています。ただ、相続税対策を考えると難しいですね。

――子世代の方は、資産を引き継ぐならどちらがよいですか。

子世代の意見

・引き継ぐ側からすると現金がよいです。私は株式投資をしていますが、妹は未経験のため株式を引き継いでも困るのではないかと思います。

・私の親は有価証券を保有していましたが、亡くなる前にすべて現金にしていたので分割協議もスムーズでした。妻の両親は相続税対策として不動産で残したいと考えているようですが、相続時にどう分割するのかという懸念はあります。

・株式を相続したことがありますが、管理が面倒でしたので、現金の方がよかったです。

・亡くなった父親の株式を母親が相続しており、将来的には私が相続することになると思います。私も株式投資しているので、株式のまま引き継ぎたいですね。妻の親が保有する株式ついては、生前に売却してもらったほうがよいのでは…と妻には伝えています。ただ、今後どうするのかまだ決まっていません。

まとめ:
シニア世代はまだ元気なうちは現物のまま保有したいというお気持ちが窺えました。子世代は分割しやすい観点から現金で受取りたいという意見が多数派でした。シニア世代よりも子世代の方がはっきりとしたイメージをお持ちのようです。

介護・相続に関する家族のコミュニケーション

ライフスタイルの変化に伴い、核家族化が進む中、介護や相続についてどの程度、家族間で話し合っているかを聞きしました。

――ご自身の家族と、介護や相続について話し合ったことはありますか?

シニア世代の意見

・子と投資については頻繁に話しますが、介護や相続については話していません。自分から話しにくいわけではないのですが、そのうち子の方から切り出してくるだろうと思っています。

・私は旅行で遠出する時にも、万が一に備えて最新の目録を子に渡すくらいオープンに話しています。

・娘2人とも仲が良く、資産承継については話しました。ただ、株式のことを話しても2人とも興味を示してくれず、困っています。

子世代の意見

・一緒に住んでないので話すタイミングがありません。介護の話をしなければ…と思いますが、自分から言い出しにくいですね。また、相続について、こちらは受け取る側なので親のほうから切り出してほしいです。

子世代からの質問

子から相続について切り出されたら、どう思いますか。例えば、遺言書を作っておいてほしいと言われたらどうですか。

シニア世代の回答

シニアA:全然問題ないです。自分に関心を持ってくれているとわかって嬉しいです。

シニアB:悪い気はしないです。

シニアC:私は、親とそのような話しをする前に親が他界したので、皆さんには機会を見て切り出すことをお勧めしたいです。

子世代からの質問

私は親の金融資産については把握していますが、夫の両親の状況を全く把握できてないので心配です。義理の娘からこのような話を切り出されたら、どう思いますか。

シニア世代の回答

シニアD:関係性によると思います。自分は娘がいますが、娘の夫から直接切り出されると少し抵抗感があるでしょう。娘夫婦が一緒にいる時に娘から切り出してきたら、夫にも聞こえるようにそれとなく話すと思います。

まとめ:
相続や介護について、シニア世代は子から話を切り出されることに抵抗がないという方が多い中、話すきっかけについては「そのうち子が言うでしょう」と待ちの姿勢の方が少なからずいらっしゃいました。一方で、子世代からは「資産を受け取ることが目的と捉えられ、親の気分を害すのではないか」と心配されるなど、なかなか切り出しにくいようです。家族の将来については、親から切り出してあげるのが良さそうです。もし、子から切り出すのであれば、「お金の話」ではなく、「将来の不安を和らげるため」というように前向きなかたちで話し始めてみてはいかがでしょうか。

相続対策、準備の状況は?

相続について、親世代に何か対策していることがあるか聞いてみました。また、子世代には、親にどんな相続の準備をしてほしいかを聞きました。

――現在、何か相続対策をしていますか?

シニア世代の意見

・毎年1度、財産目録を更新して貸金庫に預けており、家族にそのことを伝えています。

・目録は作成していません。まだ教えたくないし、作成したとしても亡くなるまでは見せないつもりです。

・パスワード一覧などを作成しています。その置き場所を妻には伝えていますが、子には伝えていません。

・エンディングノートを書き始めたものの、書き方がよくわからず、完成していません。

・80歳を超えましたが、まったく考えてもいません。今日の座談会を機に相続と介護についても考えようと思います。ほとんどの高齢者は何も対策を取っていないように思います。

・不動産をどうするか考えないといけません。税金・諸費用で困らないだけのお金も残すので、そのまま引き継いでもらいたい気持ちがあります。

子世代の意見

・親が財産目録・各種契約や連絡先のリストを作成していれば特に問題ないと思います。

・親が農地を貸しているようなので、相続発生前にそういった権利関係を明確にしておいてほしいです。

・自宅にある不要なものは今のうちに片づけてほしいと、常々親に伝えています。

・家の片づけを最優先でお願いしたいです。義実家の片づけに半年以上かかりました。私でできる範囲は片づけましたが、最終的には業者に依頼することになり、高額な支払いが発生しました。

・不動産については親自身のためにも早めに処分して、元気なうちに利便性の良い賃貸マンションか施設に引っ越してほしいです。現金や株式等は好きにして残さなくていいよと伝えています。

子世代からの質問

資産は子に平等に分けますか?夫の兄弟が男4人なので参考までにお聞きしたいです。

シニア世代の回答

シニアE:差をつけます。逆に差がないとおかしいと思っています。

シニアF:娘2人なので平等に渡す予定です。しかし、男兄弟が4人であれば色々と生活の状況も異なるでしょうから難しそうですね。

子世代からの質問

差をつける場合、どのタイミングで子に伝えるのがよいでしょうか。いざ相続時に遺言書で知ると争族になるのではという懸念があります。

シニア世代の回答

シニアE:すでに普段の会話で伝えています。子によって、学費やその他かかった費用が異なるので、その辺を踏まえて差をつけています。

シニアG:差をつけるのであれば、死期が近くなった頃に伝えると思います。理由も遺言書に書くより、言葉で伝えたほうがよいと思っています。

まとめ:
財産目録等を作成しているシニア世代は半数程度で、その他に相続対策をされている方は少数でした。子世代からは、目録の作成や不動産は売却しておいてほしいといった具体的な意見や、元気なうちに自宅を片づけてほしいという意見が多かったです。

元気なうちに早めの準備を

最後に、認知症を発症した場合は金融機関の口座が凍結されることをご存じかお聞きしましたが、いずれの世代も「知らない」と答えた方が多数でした。相続対策や認知症発症時への備え、ご自宅の片づけなど、まだ準備されていないシニア世代の方は、元気なうちに検討してみてはいかがでしょうか。また、子世代の方は家族の将来について心配な点を具体的に書き出してみてはいかがでしょうか。

これまで複数回にわたって座談会を開催してきましたが、毎回それぞれの世代の意見の中に共通点が見られました。シニア世代はまだまだ大丈夫とお考えで、子世代はそろそろ心配だけど言い出せないという点です。

今回お伝えした世代間の意識の違いを参考にしていただき、早いうちからご家族で対話を始めていただければと思います。