3月FOMCは利上げ見送りの気配が濃厚

3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)を来週に控え、市場では今回の利上げが最後となり利上げサイクルが終焉するとの観測が高まっています。

わずか1週間の間にシリコンバレー銀行、シグネチャー銀行、シルバーゲート銀行の3行が事業停止に追い込まれました。不安心理が他行へ波及しないよう米当局はすぐさま「バンク・ターム・ファンディング・プログラム(BTFP)」を打ち出しました。

これは銀行が保有する債券を担保として差し入れる代わりに、米連邦準備制度理事会(FRB)が資金を供給する仕組みです。これを持って銀行は資金ショートに陥ることなく業務を遂行できることになりますが、流動性供給のための一時的措置とはいえ、FRBが銀行に資金供給をすることを決めたのです。

この決定は、これまでの引き締め政策に逆行するものです。一方で、銀行の資金繰りを悪化させる引き締め策(利上げ)を続けられるのでしょうか?インフレを徹底的に抑えるには利上げを継続すべき局面です。しかし、急ピッチだった金利上昇の影響が銀行破綻という形で表面化したことで、FRBは今後の利上げを再考せざるをえない状況に変わってしまいました。

市場には3月FOMCでは利上げを見送る、という見方も出てきており、金利先物市場では早くもこの夏の「利下げ」が織り込まれつつあります。

今後予想される日本の金融政策。米ドル/円相場にどのような影響があるのか?

米国には利上げサイクルの終焉が見えてきましたが、日本はどうでしょうか?

4月9日に、植田和男日銀新総裁が誕生します。国会での所信聴取では今の大規模な金融緩和の継続が必要だという考えを示しましたが、金融緩和の出口戦略について「考えていないわけではない」とし、「持続的・安定的に2%のインフレ目標が達成できる見込みが得られるようになれば出口戦略を開始する」とも話されています。

1月の日本の消費者物価指数は総合で前年同月比+4.3%、コア+4.2%、コアコア+3.2%となり、いよいよ日本にも本格的にインフレの波が押し寄せていることが確認できます。

また2023年の春闘は大企業を中心に労働組合の要求通りの満額回答が相次いでおり、賃金上昇も期待できる環境となってきました。足元では欧米の金融システム混乱の影響を見極める必要もあり、早期の政策転換は見込まれていませんが、インフレターゲット達成が見込まれる状況はそう遠くはないと考えられるところまできています。

となれば、イールド・カーブ・コントロール(YCC)政策の修正or撤廃、マイナス金利の解除など植田日銀時代には大規模緩和からの脱却を模索する政策が迫られるでしょう。つまり、米国が金融引締めを終える頃に日本が金融引締めのフェーズに入ってくることになります。

日米の金融政策は米ドル/円相場にとって大きな材料です。米金利上昇圧力が緩和し、日本の金利上昇の可能性が出てきたということは、日米金利差がこれ以上拡大する可能性は大きくなく、むしろ縮小していく方向へバイアスがかかってくるということです。

ということは、米ドル/円相場は米ドル高/円安ではなく、円高/米ドル安方向にバイアスがかかってくると考えられます。3月8日につけた137.90円台は2023年の米ドル/円相場の高値だった可能性がありそうです。